生物科学部門
生物は多種多様な細胞や分子が複雑なネットワークを形成しているダイナミックなシステムです。 生物科学部門では、ひとつひとつの細胞や細胞を構成する分子の構造や機能を調べるとともに、生物の多様性がどのように生まれているのかを理解するため、基礎研究をしています。生命の持続性と多様性の維持にかかわる原理に加えて、基盤となる細胞機能や生物体における恒常性を保つメカニズムに焦点を当てて研究を進めています。分子や細胞からシステムや動物、植物個体にいたる、生物における様々なレベルの階層の多様な現象を研究しており、その対象は多岐にわたります。
生物科学部門には四つの研究グループがあります。第一のグループは“形態機能学分野”で、高次の細胞機能の基礎となるシグナル伝達機構、そして高等植物や細菌の環境ストレスに対する生理学的な適応機構について研究しています。第二のグループは“行動神経生物学分野”で、動物の認知や学習、発声や意思決定など多様な行動とその脳内機能を研究しています。第三のグループは“生殖発生生物学分野”で、生殖細胞の形成機構や個体発生、そして生殖システムの系統発生を細胞生物学と生理学を基盤として研究しています。第四のグループは”多様性生物学分野”で、多様な生物の進化の過程を明らかにし、それをもとに各種生物群の分類体系の構築を試みています。また、種分化の問題、地理的変異の成立機構、発生と再生・発生システムの進化などについても取り組んでいます。
生物科学部門は日本の大学の生物学科の中でも最も長い歴史を持つものの一つで、1930年に動物学と植物学学科として設立され、1993年に現在の組織に再編成されました。今年度の構成員は約30名です。
研究者一覧
多様性生物学分野
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柁原 宏教授KAJIHARA Hiroshi世の中どんな生き物がいるの?研究テーマ
海産無脊椎動物の多様性解明と体系化
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小亀 一弘教授KOGAME Kazuhiro海藻類の系統および進化を探る研究テーマ
海藻類である緑藻,紅藻,褐藻の系統・進化を探り,分類体系を整理する
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増田 隆一教授MASUDA Ryuichi動物の進化と多様性を探る研究テーマ
分子系統学や集団遺伝学を通して、日本列島に生息する哺乳類の起源や動物地理学的歴史を解明する
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髙木 昌興教授TAKAGI Masaoki鳥の種分化解明の鍵は生態学にある研究テーマ
大小様々な島から構成される日本列島には、認識されていない鳥類の進化的な単位が多く潜んでいる。多様化が進んでいるこの列島で局所適応、種間相互作用、配偶者選択など生態学的視点から、鳥類の種分化機構について探求している。
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加藤 徹准教授KATOH Toru野生ショウジョウバエの進化の道筋を探る研究テーマ
ショウジョウバエ科の系統と進化に関する研究
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角井 敬知講師KAKUI Keiichi無脊椎動物の多様性:名前から生き様まで研究テーマ
タナイス目甲殻類を主たる対象とした系統分類学と生物学
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仲田 崇志講師NAKADA Takashi微細藻類の違いを見極める研究テーマ
微細緑藻類の系統分類体系の確立を目指す
形態機能学分野
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千葉 由佳子教授CHIBA Yukako植物生存戦略とRNA代謝研究テーマ
RNAから迫る植物の環境応答機構と生存戦略
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藤田 知道教授FUJITA Tomomichi目をとじてごらん、ほら、植物たちの声がする研究テーマ
【植物の秘密を解き明かしその能力に学ぶ】植物は一次生産者として、私達を含む全ての地球上の命を支えています。しかし私たちは、植物のことをまだ十分にわかっていません。植物の発生や形作りはどのようにすすむのでしょうか。まわりの環境変化に、どのように応答しているのでしょうか。植物は動物と違い、自ら歩いて動き回ることができません。そのため植物は独特の応答や発生のしくみを進化させてきました。植物が陸上に上がり5億年近くになります。その間、激しい陸上環境で絶滅することもなく生きながらえてきた環境適応能力とその成長の秘密はどこにあるのでしょうか。植物の能力を分子・細胞から個体・集団レベルに至るまで総合的に理解する、そして未来に続く私たち生命の共存の道を拓いていくことを目標としています。
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中野 亮平教授NAKANO Ryohei Thomas微生物との相互作用が支える、植物の「椽(えん)の下の力持ち」研究テーマ
微生物叢(マイクロバイオータ)が植物の生育や免疫に与える影響とその分子メカニズムを、分子生物学的に、時空間的な分解能をもって理解したい。
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伊藤 秀臣准教授ITO Hidetaka動く遺伝子トランスポゾンと適応進化研究テーマ
植物における動く遺伝子トランスポゾンの制御機構
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楢本 悟史准教授NARAMOTO Satoshi発生の分子基盤を解明し、形態形成の進化的多様性を理解する研究テーマ
内的・外的環境に依存した植物の形態形成機構の解明およびその進化的考察
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佐藤 長緒准教授SATO Takeo植物の環境適応を支えるユビキチンコード研究テーマ
植物の環境ストレス適応を支える細胞内シグナル伝達系とユビキチンコードの全容解明
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綿引 雅昭准教授WATAHIKI Masaaki植物の「しなやかな形態形成」の謎を解く研究テーマ
環境ストレスに応じた植物の形態形成の適応機構を植物ホルモン応答から解き明かす
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高木 純平助教TAKAGI Junpei植物細胞小器官のダイナミクス研究テーマ
細胞小器官の動態から探る植物の環境適応
行動神経生物学分野
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小川 宏人教授OGAWA Hiroto感覚入力から運動出力までの全神経演算過程の完全記述を目指して研究テーマ
行動解析・電気生理学・光学イメージングによる昆虫の感覚情報処理と運動制御機構の解明
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相馬 雅代教授SOMA Masayo絆を科学する研究テーマ
雌雄に共有される性的信号の進化
音声および非音声コミュニケーションの進化 -
和多 和宏教授WADA Kazuhiro脳と行動と遺伝子がいかにして個性をつくるのか研究テーマ
動物の学習行動が、脳内の神経回路・遺伝子と生後の環境によって、どのように制御され、どのように発達し、進化してきたのか?これらの問題を神経科学・動物行動学的に理解することを、目指しています。
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北田 一博准教授KITADA Kazuhiro
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竹内 勇一准教授TAKEUCHI Yuichi脳の適応変化を見抜く研究テーマ
淘汰の基盤となる神経機構: 右利きと左利きを司るメカニズム
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田中 暢明准教授TANAKA Nobuaki知性と感性の源にせまる研究テーマ
外界を知覚し、それに適した行動をとるための神経基盤
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常松 友美講師TSUNEMATSU Tomomiなぜ、どのように夢を見るのかを明らかにする研究テーマ
様々な遺伝子改変マウスを用いて、夢見神経メカニズムと夢見の生理的役割を解明する
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福富 又三郎助教FUKUTOMI Matasaburo社会行動のカラクリ研究テーマ
電気魚の神経行動学
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出口 善行助手DEGUCHI Yoshiyuki突然変異から人の病気に迫る研究テーマ
マウス・ラットの自然発症モデル動物の開発と解析
生殖発生生物学分野
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勝 義直教授KATSU Yoshinao動物の進化から内分泌を理解する研究テーマ
様々な動物種から単離したステロイドホルモン受容体や核内受容体遺伝子を比較し、動物の内分泌制御機構の成り立ちを理解する
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木村 敦教授KIMURA Atsushi哺乳類の生殖ゲノム機能学研究テーマ
哺乳類の生殖におけるゲノム機能を解明するために、配偶子形成、特に精子形成における転写調節メカニズムを多機能性ゲノムと長鎖非コードRNAから解き明かす。
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黒岩 麻里教授KUROIWA Asato性を決める仕組みの生物学研究テーマ
哺乳類および鳥類の性決定メカニズムの解明
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小谷 友也准教授KOTANI Tomoya動物が誕生する不思議を紐解く研究テーマ
脊椎動物の卵形成と個体発生の仕組みの解明
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荻原 克益准教授OGIWARA Katsueki脊椎動物の卵巣機能の解明研究テーマ
脊椎動物の卵巣機能、特に卵の形成、成熟、排卵、排卵後の組織修復の分子機構を分子生物学的、内分泌学的、そして生化学的アプローチを用いて解明する。
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藤森 千加助教Fujimori Chika生殖腺の違いをゲノムから理解する研究テーマ
脊椎動物の生殖腺機能に関与する遺伝子の発現と機能の進化上での変化をゲノムから明らかにする
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水島 秀成助教MIZUSHIMA Shusei鳥類の不思議な受精機構研究テーマ
鳥類の受精・初期発生機構の解明と受精システムを利用した鳥類遺伝子工学技術の確立
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吉田 郁也助教YOSHIDA Ikuya幹細胞とリプログラミング研究テーマ
胚発生における様々なエピジェネティック制御について、哺乳類の幹細胞を用いて研究している