勝 義直
教授
KATSU Yoshinao
動物の進化から内分泌を理解する
生物科学部門 生殖発生生物学分野
研究テーマ | 様々な動物種から単離したステロイドホルモン受容体や核内受容体遺伝子を比較し、動物の内分泌制御機構の成り立ちを理解する |
研究分野 | 比較内分泌学 |
キーワード | 動物, ステロイドホルモン, ステロイドホルモン受容体, 核内受容体, 分子進化 |
研究紹介
生物進化の過程でどのように内分泌による生命活動の制御機構が出現・成立したのでしょうか。私たちの研究室ではその全体像の解明を目指す「進化内分泌学・比較内分泌学」の研究を進めています。動物は生殖器官で卵と精子を作り子孫を残します。この生殖器官の発生、性の分化、生殖行動にはエストロゲン(女性ホルモン)やアンドロゲン(男性ホルモン)などの性ホルモンが重要な役割を担っています。さらに生体の恒常性維持やストレス応答などには副腎皮質から分泌される糖質および鉱質コルチコイドと呼ばれるタイプのホルモンが関連しています。これらは何れも脂溶性低分子のステロイドホルモンであり、核内受容体のファミリーであるステロイドホルモン受容体と結合して生理作用を発揮しています。ステロイドホルモン受容体は、ある特定の遺伝子配列を認識しホルモン依存的に転写を制御する転写因子です。私たちの研究室では、様々な生物種からホルモン受容体遺伝子のクローニングを行ない、「進化上いつからステロイドホルモン受容体が出現したのか?」という生命現象の根本に関わる研究を進めています。さらに、分子シミュレーション解析による受容体とホルモンの相互作用を調べています。ステロイドホルモン受容体の異常は、様々な内分泌疾患を引き起こします。私たちはこれらの研究を進めることによって、ステロイドホルモン受容体が関係する内分泌疾患に対する創薬の開発にもつながることを期待しています。
ナメクジウオは脊椎動物におけるステロイドホルモン作用の起源を解明するための優れた動物です。 ヤツメウナギは、ヌタウナギとともに顎口上綱に属する顎のない原始的な脊椎動物です。
代表的な研究業績
Evolution of human, chicken, alligator, frog, and zebrafish mineralocorticoid receptors: Allosteric influence on steroid specificity, Y. Katsu, K. Oka, M.E. Baker, Science Signaling, 2018, 10, eaao1520.
Corticosteroid and progesterone transactivation of mineralocorticoid receptors from Amur sturgeon and tropical gar, A. Sugimoto, K. Oka, R. Sato, S. Adachi, M.E. Baker, Y. Katsu, Biochem J, 2016, 473, 3655-3665.
Molecular cloning and characterization of the corticoid receptors from the American alligator, K. Oka, S. Kohno, H. Urushitani, L.J.Guillette, Y. Ohta, T. Iguchi, Y. Katsu, Mol Cell Endicrinol, 2013, 365, 153-161.
Molecular cloning , characterization and chromosome mapping of reptilian estrogen receptors, Y. Katsu, K. Matsubara, S. Kohno, Y. Matsuda, M. Toriba, K. Oka, L.J. Guillette, Y. Ohta, T. Iguchi, Endocrinology, 2010, 151, 5710-5720.
Estrogen-dependent transactivation of amphioxus steroid hormone receptor via both estrogen- and androgen-response elements, Y. Katsu, K. Kubokawa, H. Urushitani, T. Iguchi, Endocrinology, 2010, 151, 639-648.