研究者情報

小谷 友也

准教授

KOTANI Tomoya

動物が誕生する不思議を紐解く

生物科学部門 生殖発生生物学分野

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研究テーマ

脊椎動物の卵形成と個体発生の仕組みの解明

研究分野細胞生物学, 分子生物学, 発生生物学, 遺伝学
キーワードゼブラフィッシュ, マウス, 母性因子, 卵形成, 初期発生, 遺伝子挿入変異体, トランスポゾン, 減数分裂, 卵割, 形態形成, 胚軸形成

研究紹介

動物の卵形成と初期発生は古くから形態学的に解析されてきましたが、どのように卵が形成され、受精後にどのように個体形成が始まるのか、その仕組みはほとんど分かっていません。最近の研究で、脊椎動物の卵は1万種類を超える転写産物を蓄えることが明らかとなってきました(図2)。私たちは、卵に蓄えられるこれら転写産物が卵形成と初期発生においてどのような機能を持つのか、いつ・どのような仕組みでその機能を発揮するのかの解明を目指しています。
 1万種類を超える転写産物のなかで、卵形成と初期発生に重要な転写産物を見いだすことは容易ではありません。私たちは、トランスポゾンを用いた遺伝子挿入変異体を作製することで、極めて効率的に卵形成と発生に重要な転写産物の同定を行なっています(図3)。同定した母性因子の機能解析は、動物が誕生する仕組みの解明となります。
 卵形成過程で転写される多くのmRNAは、翻訳を抑制され卵細胞質に蓄えられます。これらmRNAは、卵形成と初期発生の決められた時期と場所でタンパク質に翻訳されます。その仕組みは動物の誕生に重要ですが、今までに分かっていることは限られています。私たちは、これらmRNAが卵細胞質で巨大な高次構造をとること(図4)、その構造の変化がタンパク質を合成する時期の調節に重要であることを見出してきました。それでは、このmRNAの高次構造はどのように形成され、その構造の変化はどのようにもたらされるのでしょうか。私たちが見出した制御機構の解明は、新たな遺伝子発現制御機構の発見につながります。

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図2 母性因子と脊椎動物の発生
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図3 遺伝子トラップ法を用いた母性因子のスクリーニング
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図4 卵母細胞の細胞質で顆粒を形成するmRNA

代表的な研究業績

High-sensitivity and high-resolution in situ hybridization of coding and long non-coding RNAs in vertebrate ovaries and testes. N. Takei, T. Nakamura, S. Kawamura, Y. Takada, Y. Satoh, S.P. Kimura, T. Kotani. Biological Procedures Online, 2018, vol.20, issue.6.
Regulation of translationally repressed mRNAs in zebrafish and mouse oocytes. In: Klock, M., ed. Oocytes: Maternal information and functions. T. Kotani, K. Maehata, N. Takei. Results and Problems in Cell Differentiation, 2017, vol.63, Chapter 13, p297-324.
Formation of mos RNA granules in the zebrafish oocyte that differ from cyclin B1 RNA granules in distribution, density and regulation.M. Horie, T. Kotani. European Journal of Cell Biology, 2016, vol.96, p563-573.
Real-time imaging of actin filaments in the zebrafish oocyte and embryo.
Y. Nukada, M. Horie, A. Fukui, T. Kotani, M. Yamashita.
Cytoskeleton, 2015, vol.72, p491-501.
Cyclin B1 mRNA translation is temporally controlled through formation and disassembly of RNA granules.
T. Kotani, K. Yasuda, R. Ota, M. Yamashita. Journal of Cell Biology, 2013, vol.202, p1041-1055.
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学位博士(理学)
学歴・職歴1999年 北海道大学理学部生物科学科 卒業
2001年 北海道大学大学院理学研究科修士課程 修了
2004年 北海道大学大学院理学研究科博士課程 修了
2004-2007年 国立遺伝学研究所 プロジェクト研究員
2007-2010年 北海道大学大学院先端生命科学院 助教
2010-2012年 北海道大学大学院理学研究院 助教
2012年- 現職
所属学会日本動物学会, 日本分子生物学会
居室理学部5号館