イベント

応用特異点論ラボセミナー:特異点論の Band-Engineering への応用(寺本央 (電子研MSC))

2018年426日 開催

開催日時

2018年4月26日 16時30分 ~ 2018年4月26日 18時00分

場所

理学部3号館210号室

講演者

寺本 央(北海道大学、電子科学研究所)

タイトル:「特異点論の Band-Engineering への応用」

アブストラクト:
固体のバンドの幾何学的構造は固体の電気伝導性等の物性を決める重要な構造である。近年、Dirac-cone engineeringと呼ばれる二つのバンドを衝突させ、バンドの幾何学的構造を変化させることで、物性を制御する試みが盛んにおこなわれている[1]。ここでのBand-Engineeringとは、以上のDirac-cone engineeringを含む、複数のバンドを衝突させることで、バンドの幾何学的構造を変化させ、それにより物性を変化させ制御することを指す。

このBand-Engineeringでカギとなるのは、複数のバンドを衝突させることで、バンドの幾何学的構造がどのように変化するのかを理解することである。本講演では、バンド交差近傍のハミルトニアンを結晶点群と時間反転対称性の下、特異点論を用いることで微分位相幾何学的に分類し、その普遍開折を調べることで、バンドが衝突する際に起こりうる幾何学的変化を記述する包括的なリストを構築することを目標とする。

ここで主要な役割を果たす特異点論の枠組みは、近年泉屋らにより研究されているK[\rho(G)]同値[2]に固体の対称性に起因する同変性を加えたものであり、一般的なK同値に比べ複雑なモジュライパラメータの構造が出現することが挙げられる。本研究では包括的グレブナー基底を用いることによりこのような複雑なモジュライパラメータを含む分類を組織的に行う理論的枠組みおよびSingularを用いた全自動プログラムを開発した。その結果、様々な対称性の下、extended-tangent spaceの余次元7程度までの包括的な分類のリストを得ることができた。本講演ではこちらの方の進捗状況に関しても説明する。

本研究は、土田旭、加葉田雄太朗、近藤憲治、泉屋周一、鍋島克輔、小松崎民樹(敬称略)との共同研究の成果である。

[1] K. Homma et al., Phys. Rev. Lett. 115, 266401 (2015).
[2] S. Izumiya, M. Takahashi, and H. Teramoto. in preparation; H. Teramoto, K. Kondo, S. Izumiya, M. Toda, and T. Komatsuzaki, J. Math. Phys. 58, 073502 (2017).

平成30年度より,理学研究院・国際数理連携教育推進センター・数理連携教育推進室に「応用特異点論ラボ」を組織し、学際研究の推進及び大学院生教育の補助をおこなうものである.