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談話会: 非局所反応拡散方程式の解の時空間ダイナミクスにおける積分核形状の影響(石井宙志)、非双曲力学系のエルゴード理論(中野雄史)

2024年74日 開催

Schedule:15:00-17:30

Place: 理学部4号館5階4-501(対面開催)

Speaker: 石井 宙志 氏(北大電子研)、中野 雄史 氏(北大理)

Schedule:
15:00~16:00 石井 宙志 氏
16:00~16:30 休憩
16:30~17:30 中野 雄史 氏


石井 宙志/非局所反応拡散方程式の解の時空間ダイナミクスにおける積分核形状の影響

本講演では,未知関数と適切な積分核との合成積で与えられる非局所効果を反応拡散方程式に加えた,非局所反応拡散方程式について扱う.このような非局所効果は生物種の拡散過程や細胞・物質間の相互作用を記述する際に用いられており,非局所反応拡散方程式は生態学や神経科学,材料科学などの分野で数理モデルとして良く現れる.また,非局所反応拡散方程式は単独の方程式であっても,積分核形状を適切に与えることで多様なパターンが形成されることが数値計算により調べられている.本講演では,非局所反応拡散方程式に対していくつかの非線形性を考慮した際に,積分核の形状に応じて解の時空間ダイナミクスがどのように変化するか,講演者が行ってきた解析の結果を紹介する.


中野 雄史/非双曲力学系のエルゴード理論

双曲性と呼ばれるある種の秩序立った幾何構造を持つ力学系については,自然な不変測度に関して有限状態Markov連鎖と同型になり,大数の強法則をはじめとする様々な力学系の極限定理が成り立つことが(1960–1980年代の組織的な研究を経て)知られている.非双曲力学系の研究は,長年に渡って研究されているものの現在でも完成には遠い状況にある.特にその統計については双曲力学系のそれと大きく異なりうる(e.g. 無限個の平衡状態を持つ)ことがSmaleの時代から示唆されており,どのような非双曲力学系のクラスが双曲力学系と類似の統計的性質を持つか,また,双曲力学系と異なる場合はどのような方法によってその統計を理解すべきか,といった問題が近年の「可微分エルゴード理論」の中心的課題としてある.本講演では,(講演者が関わってきた)次の3種類の非双曲力学系に関する結果を紹介したいと思う.(1) 中立方向を持つ部分双曲力学系(大数の法則や中心極限定理が成立し,摂動安定),(2) ホモクリック接触を持つ力学系(大数の法則が成立しない),(3) Blank-Kellerの区分拡大写像(大数の法則は成立するが摂動安定でない).