仲間に支えられて生きている

田中 良 助教(地球惑星科学科)

いまこそ「友」
コロナ禍に見舞われ、かつてなく「孤独」「孤立」が問われています。いまこそ友人や仲間との思い出、会えなくてもつながっている心強さ、リアルに会うことの大切さなどを感じるときです。研究者も時には悩み苦しみ、そして仲間に支えられ豊かな経験をしています。各学科の教員に話を聞きました。

【地球惑星科学科】田中 良 助教
埼玉県出身、33歳。北大地球惑星科学科卒業。専門は十勝岳、有珠山などの火山研究。フィールド大好き。学部4年間は北大アメフト部Biggreenに全てを捧げた。

かけがえのないアメフト部の仲間

学部4年間はアメフトに熱中していました。アメフト部の同期は何ものにも代えがたく、いつも僕を支えてくれています。アメフト部は、活動全てにおいて、自主性が求められました。当然意見が割れることもあります。今振り返ると、自分のダメな部分も含め、仲間に全てをさらけ出していたように思います。メンタルが弱くなり、一週間部活に行けなくなったとき、仲間が僕を自室から引きずり出して、元の居場所に戻してくれました。あれから10年ほど経ち、お互い別の道を歩んでいても、かつて同じ目標に向かって苦しみを乗り越えた経験があるので、深い付き合いが続いています。

アメフトの経験を教育に活かしたい

アメフトの試合には40人ほどの選手が出場します。それぞれに役割があり、全員が最大限のパフォーマンスを出さないと勝てません。しかし僕は最初、上手い後輩ばかりをかわいがっていました。ある時、それではチームビルディングなどできないことに気付きました。それからは、各自が個性や強みを発揮できるように取り組みを変えました。この経験は僕の宝もので、大学教員として教育の場に活かそうとしています。

地球惑星科学科の学生には、学習が得意でない人や、フィールド調査が好きではない人もいます。でも、当然それぞれいいところがあるので、一人一人をよく見て成長を支えたいです。この分野の特徴はフィールド調査です。例えば火山分野では約20㎏の観測機材やバッテリーを担いで一週間ほど山に登って下りて、チームで寝食を共にすることもあります。研究においてもアメフト部で培われた人間力を発揮し、同じ目標を目指して、円滑なチーム運営を心がけています。

有珠山で開かれた火山仲間との勉強会。中段一番右が田中本人。
つらい時の支えは仲間

博士後期課程の研究生活はつらい側面もあります。修士課程修了後、就職する人が多い中で、さらに3年間の下積みが続きます。僕は研究が上手くいかないこともありましたし、博士号を取れるか不安になることもありました。しかし幸運なことに同じ火山研究の同期が全国に8人いて、心強くもありました。ある時、東北大学の仲間が勉強会を立ち上げ、その合宿に参加しました。それぞれの得意分野を教え合ったり、夜はお酒を酌み交わしながら悩みを打ち明け合ったりしました。解決には至らなくても、同じ境遇の仲間と悩みや不安を共有できたことは支えになりました。今でもそのつながりが続いているのは幸せです。

孤立しないことが大事

同世代の近い境遇の仲間を大切にしてほしいです。地球惑星科学科では学部2年生の分属直後に地惑セミナーという合宿をしています。コロナ禍で合宿ができなかったのは残念でしたが、少しずつ対面授業や演習が再開され、学生たちが仲間とつながっていく様子を見て安心しています。教員として、学生同士のリアルな交流の場を作りたいです。孤立しないことが大事だから。遠くても近くても、人とのつながりは必ず助けになります。僕がアメフト部でも博士課程でも今でも支えられているように。


理学部広報誌「彩」第8号(2022年8月発行)掲載。>理学部 広報・刊行物

※肩書、所属は、広報誌発行当時のものです。

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