若いうちにぜひ友人づくりを

相沢 智康 教授(生物科学科/高分子機能学)

いまこそ「友」
コロナ禍に見舞われ、かつてなく「孤独」「孤立」が問われています。いまこそ友人や仲間との思い出、会えなくてもつながっている心強さ、リアルに会うことの大切さなどを感じるときです。研究者も時には悩み苦しみ、そして仲間に支えられ豊かな経験をしています。各学科の教員に話を聞きました。

【生物科学科/高分子機能学】相沢 智康 教授
札幌市出身、北大高分子学科卒業。学生時代にE-mailのことを友だちから初めて聞いた時は「いいメール(=良い手紙)」と信じていた。

今になって分かる

私は北大で、NMR(核磁気共鳴法)装置の共用事業責任者をしています。高額な装置なので、全国の大学や研究機関に設置し、連携して利用しています。この事業を進める中で、人とのつながりの大切さを強く感じているところです。

研究者が所属する学会には「若手の会」があり、若い研究者や学生が集まって合宿形式の勉強会を催すこともあります。学生時代に恩師から「無理をしても若手の会に参加しなさい、友だちや研究者の知り合いを作ってきなさい」と何度も言われました。実は当時の私は研究に手一杯で、知らない人の集まりに入るなど気乗りせず、心ならず参加していました。しかし、今、NMR共用事業で関わっているみなさんは、当時若手の会で知り合った仲間ばかりです。かつての交流があったからこそ、気軽に相談しあえ、事業を効率よく進められます。若手の会の有り難みは歳を重ねて痛感しています。研究者を目指す学生さんにも「若手の会」の意義を伝えたいです。

NMR実習の様子。私(右端)の隣がかつて若手の会で知り合い、交流が続いている菅瀬謙治先生(京都大学)
まさかのつながり

今は映像教材を手軽に扱えるようになりましたが、数年前までは手探りの状態でした。その時、手を差し伸べてくれたのが北大オープンエデュケーションセンターの方々で、映像制作のノウハウを教えてくれました。また、中学校時代の放送部の友人が、放送関係の仕事に就いていたので相談にのってもらいました。中学時代の友人が、今の自分を助けてくれたことには感激しました。こうして助けられると、若い頃に友人をもっと作っておけばよかったと思います。

きっかけのハードルは下がった

コロナ禍で友人関係が築けなかった学生さんがいるかもしれません。話しかけるのが苦手な人もいるでしょう。しかしオンライン授業ではチャットを使って質問しやすくなったとも聞きました。メールやSNSなどを利用すれば、人とつながる最初のハードルは下がります。きっかけはそれでいいと思います。小さな出会いから、本当の友人が見つかればとても素敵なことだと思いませんか。

五感の刺激は必要

一方でリアルに会うことの大切さを強く感じるのが学会です。最近主流のオンライン学会は、講演内容は覚えていても、いつだれの話だったかがあまり記憶に残っていません。これまでは、学会に行く道のりや会場、参加者などの周りの情報が一緒に頭に入っていたようで、どの学会のどの先生の話だったかを連続したシーンとして思い出すことができます。五感で刺激を受けることはとても大切です。コロナ禍を経てリアルの大切さに気付けたことはいい経験でした。

若いうちの友人づくりを勧めます

友人のおかげで豊かな経験を積んできました。もし海外にもっと友人を持てたらどんなに世界が違うのだろうと思うことがあります。ぜひ若いうちに多様なネットワークをつくることをお勧めします。今は人と知り合う最初のハードルが低くなったので、一歩踏み出せば世界と自由にコミュニケーションできるようになりますね。人生を豊かなものに育ててください。


理学部広報誌「彩」第8号(2022年8月発行)掲載。>理学部 広報・刊行物

※肩書、所属は、広報誌発行当時のものです。

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