澁川陽一 准教授
研究概要
研究内容
統計力学において,格子模型の可解性を保証する式が(量子)ヤン・バクスター方程式であるといってよい.この方程式は,本来,線型写像に関する方程式であるが,ヤン・バクスター方程式と同値であるブレイド関係式は,一般に,テンソル圏上の射に関する方程式としても意味を持つ.したがって,いろいろなテンソル圏上でヤン・バクスター方程式(ブレイド関係式),及びその解を考えることができる.私が現在研究しているダイナミカル・ヤン・バクスター写像は,集合全体のなす圏を少し変更した圏でのヤン・バクスター方程式の解である.この研究を通じて,より統一された視点で,ヤン・バクスター方程式およびその解と他分野との関連,特に,表現論,ホップ(亜)代数,ソリトンなどとの関連を理解することに興味を持っている.
主要論文/主要著書
- Y. Shibukawa: Dynamical Yang-Baxter maps. Int. Math. Res. Not. 2005(36) (2005) 2199-2221.
- Y. Shibukawa, M. Takeuchi: FRT construction for dynamical Yang-Baxter maps. J. Alg. 323 (2010) 1698-1728.
- N. Kamiya, Y. Shibukawa: Dynamical Yang-Baxter maps associated with homogeneous pre-systems. J. Gen. Lie Theory Appl. 5 (2011) G110106.
- D.K. Matsumoto, Y. Shibukawa: Quantum Yang-Baxter equation, braided semigroups, and dynamical Yang-Baxter maps. Tokyo J. Math. 38(1) (2015) 227-237.
- Y. Shibukawa: Hopf algebroids and rigid tensor categories associated with dynamical Yang-Baxter maps. J. Alg. 449 (2016) 408-445.
参考
研究者総覧
連絡先
shibu(at)math.sci.hokudai.ac.jp
インタビュー
①出身高校・大学を教えてください
高校は兵庫県の学校から転校して卒業のときは千葉県立千葉東高校です。
大学は早稲田大学で修士も博士も早稲田でした。その後すぐ北大に来ました。
②数学はいつごろから好きでしたか?
好きだったのは小学生、中学生くらいからですね。
③なぜ好きだったのですか?
上手くいっていたからじゃないかと思います。
勉強するから、テストの結果もいいし、だからまた勉強して、というのを繰り返しているうちに好きになってというのが始まりだと思います。
④では数学に進んだのはごく自然にという感じでしたか?
そうですね。
高校生のときは必ずしもできるというわけではなかったのですが、好きという意味では好きだったので、やってみようかなということで、数学科を受験しました。
⑤受験勉強は苦労しましたか?
いや、普通の受験勉強はしましたけど、数学だからといって特別な勉強はしていないですね。
ただ、数学の成績はそんなにはよくなかったですけど・・・。
他の科目では苦労しました。
⑥大学生のときはどんな学生でしたか?
家から大学まで通学に片道2時間くらいかかっていたこともあって、自由になる時間は他の学生に比べると少なかったと思います。
大学1年生のときは授業が朝8:00過ぎくらいから始まることもあったので、そんな日は登校して授業受けて終わったらそれで家に帰る、という感じでしたね。
―サークルとかはやらなかったんですか?
サークルは都数という、ひとつの大学じゃなくて、東京圏でやっている数学のサークルに入っていました。
数学科のセミナーをやっているような感じの活動を5、6人のグループごとにしていました。
―真面目ですね(笑)
今から考えると、そうですね(笑)
―早稲田ではそういう学生は何人かいたんですね。
私の学年で5、6人くらいはいたと思います。
―早稲田だったら、早慶戦とか行きましたか?
行きましたよ。授業が休みになるんで。神宮行って応援してました。
―僕(インタビュアー)は慶応出身なので早慶戦は行きましたよ。
同い年なので同じ試合を見に行っていましたね!きっと。
―あの時慶応は結構強かったんだったっけ?
どうでしたかね~。
早慶戦で優勝が決まるというときもあったんじゃないかと思います。
⑦なぜ大学院に進学することにしましたか?
学部のときに勉強、研究をしてみたいなと思っていたので、行きました。
⑧そのときにはもう数学者になりたいと思っていましたか?
まぁ、できればですけど。
正直言って修士のときに少しだけ就職活動もしているので、両方でした。
博士に進んだときには数学者になりたい比率の方が高かったと思います。
⑨研究内容について教えてください。
大きく言えば表現論で、代数をベクトル空間上の行列(作用素)として実現するというものです。
今ベクトル空間といいましたが、ベクトル空間として関数空間をとれば、関数空間上に線形写像として実現されるので、そこに微分方程式などが出てきたりするわけです。
いろんなことが表現というものを通して把握でき、また幾何を使ったりもするので、おもしろいかなと。
―ちなみに早稲田で指導教員だった先生もそのようなことをされてる先生ですか?
そうですね。学部3、4年のときについていた先生はリー群の表現論の先生でした。大学院のときから指導してもらった先生は数理物理、当時流行し出した量子群の表現を研究されていたのでそちらのほうを勉強しました。
⑩現実的な問題とはどう関わりがありますか?
まず、物理学ですと量子力学に応用されますし、あと、化学のほうだと結晶や原子・分子の対称性を表すという部分もあります。
―世の中の役に立ちますか?
直接役に立つかどうかは・・・。私は表現論の中でも物理に関係した部分をやっていてヤン・バクスター方程式といわれるものも出てくるんですけど、そういうのは・・・。いや、やっぱりよくわかんないです(笑)
⑪澁川先生のところで学びたいという修士の学生に身につけていて欲しい知識はありますか?
代数でも幾何でも解析でも何でもいいですから、ある分野の数学の本に載っている定理とか命題とかそういうものを自分なりにひとつずつ理解したという経験があればいいと思います。私の研究室に来た後でもそのやり方でセミナーの本とかに取り組んでいただければ一定程度はわかってくると思います。
⑫今までの修士の学生さんはだいたい就職ですか?
そうですね。ほぼ就職です。教員の人が多いですが、民間企業に就職する人もいます。
⑬数学をしていてなにか思い出に残っている経験はありますか?
最近の話になりますが、当時計算していた内容を講演で発表しようとまとめていた際に、計算結果をよくよく見るとそれは結局何かがファンクターになっていたり、その類いのことを証明しているということに気がついて・・・。それまでは計算ばかりの人間だったのですが、構造などがやはりあるんだなというのに気がついたときには、少しびっくりしました。
つまり、計算しているものにある種の構造があるということをそのとき初めて身にしみてわかったということですね。
⑭高校生または大学生にアドバイスはありますか?
先ほども話しましたが、高校でも大学でも何か数学に関係する本をひとつしっかり自分なりに考えて読むという経験をしているといいのではないかと思います。もしその経験を楽しいかなと少しでも思うなら数学科に来てもいいんじゃないでしょうか。
2013年(平成25年) 5月インタビュー実施