坂井哲 教授
研究内容
私は数理物理学,特に確率論や統計力学の問題を数学的に厳密に研究しています.特に興味のある問題は,相転移と臨界現象,それに付随する極限定理(が存在するかどうか)についてです.例えば,磁石の統計力学モデルであるイジング模型の場合,「温度」を変えることで自発磁化を有したり失ったりする相転移を示します.一般に臨界現象とは,相転移点(イジング模型の場合,自発磁化を喪失するギリギリの温度)近傍での諸量の異常な振る舞いのことですが,それはモデルを構成する無限個の要素が協力し合った結果として発生するものと考えられています.このような状況を真に理解するためには,従来の独立変数を扱う確率論を超えた理論が必要になるでしょう.非常に難しいですが,それだけに重要でやり甲斐のある分野です.今まで研究してきた主なモデルは,上述のイジング模型,スカラー場の理論で登場する φ4 模型,高分子の統計力学モデルである自己回避歩行,ランダムな構造への浸透過程(あるいはその定常状態)を模型化したパーコレーション,伝染病などが社会に蔓延していく様子を模型化したコンタクトプロセス,過去の履歴に影響を受けるランダムウォーク,などです.
主要論文/主要著書
- Akira Sakai,
Correct bounds on the Ising lace-expansion coefficients,
Commun. Math. Phys., 392 (2022): 783–823. - L.-C. Chen and A. Sakai,
Critical two-point function for long-range models with power-law couplings: the marginal case for d ≥ dc,
Commun. Math. Phys., 372 (2019): 543-572. - Akira Sakai,
Application of the lace expansion to the φ4 model,
Commun. Math. Phys., 336 (2015): 619-648. - L.-C. Chen and A. Sakai,
Asymptotic behavior of the gyration radius for long-range self-avoiding walk and long-range oriented percolation,
Ann. Probab., 39 (2011) 507-548 - Akira Sakai,
Lace expansion for the Ising model,
Commun. Math. Phys., 272 (2007): 283-344.
参考
研究者総覧
https://researchers.general.hokudai.ac.jp/profile/ja.8356059fa5483ab3520e17560c007669.html
個人のWebPage
https://www.math.sci.hokudai.ac.jp/~sakai/
連絡先
sakai(at)math.sci.hokudai.ac.jp