数学に関するエピソード(2)
フーリエ(1822)により発見され、アインシュタイン(1905)によりブラウン運動を用いて説明された熱伝播や拡散現象を表現する「熱方程式」。この簡潔で美しいアイディアに端を発する壮大な現代数学とは?
指数関数がもつ特別な性質については高校で既に習っていることでしょう。熱伝播や拡散現象はラプラシアンと呼ばれる2階の微分作用素 \(L\) を用いて熱方程式の解で表現されますが、実は、熱方程式は指数関数を(遥かに!)一般化した半群 \(e^{tL}\) を用いて解かれることが知られています。さらに、宇宙のモデルとしても重要な“曲がった空間”「多様体」に対してもラプラシアンと半群が定義されて、そこでの熱方程式も半群を用いて解かれます。半群は数学の様々な分野で深い進化をとげて、20世紀数学の金字塔であるホッジ・小平理論,アティヤ・シンガーの指数定理、ペレルマンのポアンカレ予想解決につながるハミルトン・プログラム、一方、現代社会における重要なテーマである混合材料の物性の解明やウェッブのページランクなど様々な研究課題において中心的な役割を担っています。
北大数学では多様体の半群の研究に必要な多様体論、関数解析、確率論を学部3・4年の講義において学びます。