鈴木悠平 准教授
研究内容
C*環論は無限次元・非可換の構造を理解するための枠組みを提供する体系です。
C*環はこのような(例えば群、位相力学系、距離空間などの)構造を調べる際に、しばしば自然な形で現れ、理解を深め、解明するために本質的な役割を担う強力な道具でもあります。
私自身はこういった応用よりは、むしろこのような構成法を使って、C*環論の新しい知見や現象を開拓することに興味があり、これまで取り組んできました。
ごく最近は、従順作用というものの、本質的な非可換化に成功し、この新しい数学現象がどのくらい豊かであるか、現在も掘り下げて研究に取り組んでいます。
主要論文
- 鈴木悠平,Almost finiteness for general etale groupoids and its applications to stable rank of crossed products, Int. Math. Res. Not., (accepted)
- 鈴木悠平,Simple equivariant C*-algebras whose full and reduced crossed products coincide,
J. Noncommut. Geom. 13 (2019), 1577–1585. - 鈴木悠平,Complete descriptions of intermediate operator algebras by intermediate extensions of dynamical systems,
Commun. Math. Phys., (accepted) - 鈴木悠平,Non-amenable tight squeezes by Kirchberg algebras,
Preprint, arXiv:1908.02971
個人のWebpage
https://www.math.sci.hokudai.ac.jp/~yuhei/j-index.html
連絡先
yuhei(at)math.sci.hokudai.ac.jp
学生へのひとこと
真に面白いと思えるものに打ち込み、他の人にはまねできないことを目指しましょう。
インタビュー
Q.ご出身地、ご出身の大学を教えてください。
出身は北海道千歳市です。大学の学部時代は北大でした。大学院は東大に行き、そのあとの大学院時代は転々といろんなところに移っていました。
Q.どんな学生時代を過ごしましたか?また、数学を学ぶことになったきっかけなど教えてください。
数学を勉強しようと思うようになったのは大学に入ってからです。大学生の時は、模試の採点などのバイトとかはしましたけど、基本的に数学していたと思います。学部2年生か3年生くらいの時に「数理応援プロジェクト」という、何人かでセミナーをする、という企画が大学であったんですよね。それで何人かで集まってみんなで勉強できるようになったのが良かったですね。
Q.その後、どういうタイミングで研究者を目指したのですか?
それはまあ、ずっと悩んできたことでもありますね、(研究者になるのは)狭き門ですので。一番最初のタイミングは修士時代で、学振DCに採用された事が、これまで続けることができた一つのポイントかなと思います。収入がないと経済的にも精神的にも影響がありますので、そういう仕組みがあったおかげというのはありますね。
Q.先生の研究分野は「作用素環論」というものですが、これはどういったものですか?
一言では難しいですが・・・本当に雑に言えば、無限次元でかつ非可換、順序が重要になってくる、そういう体系の中で比較的一番理解できているもの、というのが僕は作用素環論だと思っていて、数学的な構造を調べるというのが、僕らがやっていることですね。物理の背景でやっている人も結構いて、優秀な人もいますが、僕はそっち方面はほとんど理解していないです。僕は本当に、数学の対象として研究をしています。
Q.その分野はある意味一番華やかな分野と言っても良いと思うんですけれども、優れた人が飛び出す分野というか。いつ頃からそういうところに興味を持ちましたか?
僕が興味を持ったのは大学3年生の時に関数解析というのを勉強して、それが面白かったから作用素環にしてみようと思ったのもあります。作用素環論というのは関数解析を下地にした数学で、その中で比較的純粋な数学かなという気がして。ほかに偏微分方程式というのも考えたことがありますが、教科書を見たら物理の方程式が色々並んでいて、これに自分が興味を持って真に参入するのはちょっと難しいかなと思ったので、作用素環論にしたという感じですかね。あんまり深く考えて決めたという感じではないですけど。
(もう少しさかのぼると、)大学1年生の時に微積分の先生が授業で「解析概論」の本を紹介されまして。これを読んでいたら面白い本だなぁと思って、今から考えるとちゃんと理解できていなかったと思うんですが、それを読んだのが興味を持った一つのきっかけだったと思いますね。
Q.これまで研究された中で、数学のことを考える時間が多いと思いますが、研究が行き詰まる事はありますか?
それはいくらでもあります。一番大変なのはそもそも適切な問題設定をみつけるというか、そういうところが一番苦労する場面かなという気がしますね。ある意味適切な問題設定が見抜けたら、あとは何とかなると思うのですが。何をすると面白いかというのを見抜くのが一番大変なステップだと思います。そのために人の論文を読んだりして何かヒントがないかなとか探すわけですけど、そういう時期が一番つらいですね。作用素環論というのは今大きな目的が特にあるわけではなくて、各自で問題意識を持って面白いものを開拓するという時期にあると思いますので、そういう意味では多くの人が苦労している時期だと思いますね。
Q.ほかの大学と比較して、北大数学の印象はいかがですか?
北大はまずキャンパスが良いですね。(勉強・研究をする上では)気持ちの問題も重要なところだと思いますので、きれいで広々したキャンパスがあるのは重要ですね。また数学図書の充実している点は、東大や京大と比べても全く遜色ないので、そういう点で損することはないと思います。
Q.これから大学で数学を勉強したいという学部1年生や、高校生にアドバイスをお願いします。
プロを目指していることを眼中に含めている人に対して言うと、多分数学というのは、やるものにもよりますが、「頭の回転の速さ」というのは世間一般で思われているほど重要じゃないんですよね。本当に重要なのは、「どうしてもこれをやりたい」という執念というか、そういうしつこさみたいなのがないと、多分研究の第一線で活躍するというのはできないと思います。頭の良し悪しとか関係なく、自分はこれだけは大切と思うようなことを見つけていくと良いんじゃないかと思いますね。
Q.最近はクイズ番組で大学生が良く出ていますが、あのくらい頭が良くないとついていけないのかなぁと思ったりしますが・・
もちろんそういう能力が必要とされる部分もあると思うんですけど、数学と一言で言ってもかなり広いし、そういう人だけが活躍できる場所だとは思わなくて良いと思っています。そういう種類の人が期待されて活躍できるかというと、これも一般的には正しくなくて。執着心みたいなのが無いと、一流には届かないかなという気はします。
2020年(令和2年) 12月インタビュー実施