朝倉政典 教授
研究内容
モチーフという概念は1960年代にグロタンディエクによって生み出されました。それはとても壮大な構想で、さすがのグロタンディエクも“構想”で終わってしまいました。しかしながらその素晴らしいアイデアはその後の多くの一流数学者たちによって精錬ないし一般化され、いまや数論幾何学における活発な研究分野のひとつです。クレー研究所から出題されたミレニアム問題のうち、ホッジ予想とバーチ・スウィナートンダイアー予想の2題はこの分野と深く関係しています。一方、ミレニアム問題ではありませんが、非常にエキサイティングでミステリアスな未解決問題としてベイリンソン予想とよばれるものがあります。これは簡単にいうと、“周期(レギュレーター)=L関数の特殊値”であろうという予想です。左辺の“周期”は代数的K理論や代数的サイクルから派生するもので、これだけからはL関数はまったく感じられないのですが、計算していくと不思議とL関数が現れる、そんな予想です。検証されている例はごくわずかであり、たとえば楕円曲線に限っても未解決問題が山積しています。一方さまざまな分野・理論と関係していて研究意欲がそそられる問題でもあります。私はこの広大な荒地でどこまで意味のあることができるかを目標に研究しています。最近ではp進理論を積極的に使うことによっていろいろな問題にアタックしています。
主要論文
- M.Asakura,
On the K_1-group of algebraic curves. Invent. Math.149 (2002) 661–685. - M.Asakura,
Surjectivity of p-adic regulators on K_2 of Tate curves.
Invent. Math. 165 (2006), 267–324. - M. Asakura and K. Sato,
Syntomic cohomology and Beilinson’s Tate conjecture for K_2,
J. Algebraic Geom. 22 (2013), no. 3, 481–547.
研究者総覧
連絡先
asakura(at)math.sci.hokudai.ac.jp