今回は理学部誕生の後編として、建物についてお話します。理学部本館は設立当時から鉄筋の建物でしたが、当時の学内(農学、医学、工学)の建物は木造2階建てであり、札幌市内にも鉄筋コンクリートの建造物はほとんどなく、本格的な鉄筋コンクリートの建築物として最初のものと言われています。
敷地は応用科学的な学部である農学、医学、工学の中心となる現在の場所となりました。建築は昭和2年11月から開始され、昭和4年11月に竣工しました。建築費は140万円、設備費を含めた総額は約200万円(現在の価格では、30億~35億円かと思われます。)と記録されています。
植物のレリーフで飾られたアーチ部分
外壁をスクラッチタイルやテラコッタで覆い、ロマネスク様式やゴシック様式を加味したヨーロッパ中世風の堂々たる外観は、キャンパス内に異彩を放っており、他学部から羨望の目で見られていました。
正面玄関を入ると、まず目に入るのが淡い褐色の大理石の柱とらせん状の階段に沿って3階まで続く吹き抜けです。見上げると、重厚な大理石の柱と半円状の白亜の天井が、窓から差し込む柔らかな光に浮かびます。おおらかな曲線に支えられたふくよかな天井はアインシュタイン・ドームと呼ばれています。(詳細はこちらを参照してください。)
天井まで続く重厚な大理石の柱
また、2階には、ゴシック・リバイバルの天井細工が鮮やかな大会議室があります。以前に某航空会社の機内誌にも掲載されました。現在も会議室して使用され、理学部の重要な会議が行われていることから、残念ながら一般公開はされていませんので、写真をご覧ください。
ゴシック・リバイバルの天井細工が華やかな大会議室
建物が竣工した翌年の秋、昭和5年9月27日に開学式が中央講堂(現在のクラーク会館のあたり)で執り行われました。佐藤昌介総長の式辞に始まり、当日の来賓は300名を超え、学部の開学式としては大掛かりなものでした。また、翌日からは記念の学術講演会が3日間にわたり行われました。
現在は、総合博物館として利用されており、まさに建物自体が博物館といった感じではないでしょうか。
(文:北海道大学理学部同窓会 事務局長 髙橋克郎)
※執筆にあたり、北大理学部50年史を参考としました。
※タイトルの写真はスクラッチタイルとテラコッタを組み合わせた茶褐色の外壁で覆われている理学部本館(現総合博物館)
理学部広報誌「彩」第4号(2019年2月発行)掲載。>理学部 広報・刊行物