出産で生活は激変。でも子育てをしながら研究を続ける信念をもつ
「あきらめるという選択肢はありませんでした」

理学研究院 化学部門 量子化学研究室 赤間 知子さん(特任助教)

未来を切り拓く女性たち
女性が研究や技術開発に生きがいをもって打ち込める社会、女性であっても昇進や活躍の機会が奪われない社会、一人ひとりが自分のライフステージの移行とともに生活と研究のバランスを柔軟に選択できる社会、そんな社会を実現し、次世代を担う学生や子どもたちに見せていきたいと考えています。今回の特集では勉強や研究に励んでいる女性たちにスポットをあて、進路・研究を始めたきっかけや、趣味、将来の目標など、幅広く紹介します。

量子化学の研究をしている赤間さんは,3歳と1歳の二人の息子さんを育てるお母さん。試行錯誤しながら研究と育児を両立しています。

サイエンスの世界へ踏み出すきっかけ

子どもの頃から理科が好きで,生命科学に興味がありました。中学生の頃に見た「生命40億年はるかな旅」というテレビ番組を見て,どこから生命が来たのか知りたいと強く感じました。また,両親が大学の理論物理と生化学の研究者で,研究について休日などにディスカッションしている様子を見ていたのも,研究者への道を歩むきっかけとなりました。

量子化学との出会い

早稲田大学に入学し,生命科学を研究するにはどの学科へ……と悩んだ時に「これからの生命科学には物理と化学が重要」とアドバイスを受け,化学科へ進むことを決心しました。研究室を決めるときは実験系か理論系かで悩みました。そんなときに量子化学が専門の中井 浩巳 先生に出会いました。実験系では細かく分野が分かれていたものが,理論系量子化学なら全分野が対象になって,生命科学を研究でき,生体分子を理論計算することで薬の開発にもつながっていく。私のやりたいことができるのはここだ!と感じました。

夫と一緒に北大へ

夫の小林 正人さんは同じ研究室の所属です。大学生の頃に知り合って,博士後期課程を修了後,上智大学で研究職についているときに結婚しました。そして,小林さんの北大赴任が決まり,研究職として残るか,共についていくかの決断を迫られます。その時,理解ある上智大学の上司から「一緒に北大へ行ってもいいよ」と背中を押され,現職に就くことができました。

出産で生活激変

第一子の妊娠4か月時に着任し,それまで行ってきた理論開発のほかに応用計算もテーマに加わり,研究生活が充実してきました。そして,出産を迎えます。

出産で生活は激変しました。赤ちゃんの世話,研究,家事,etc。夫,実家のサポート,研究室の理解もあり,何とか日々を乗り切っています。保育所への送迎や授乳で,研究室にいられる時間のやりくりが大変でした。北大内の保育所に入ることができ,少し改善したものの,研究の時間は限られています。でも,「一時期のことなので,研究を続けることが大事」「急な事情もあるだろうし臨機応変に」という周囲からの温かい言葉や,子どもがいても研究は続けていけるはずという信念から,やめるという選択肢はありませんでした。

忙しい合間の気分転換

趣味はスポーツ観戦。TVでスポーツを見るのが好きで,オリンピックや録りためた番組を見ています。また,F1も好きで,結婚してからも何度か鈴鹿サーキットに足を運んでいます。オフの日は気分転換も兼ねて一週間分の買い物をするという重大タスクをこなします。タスクと言いつつ,家族みんなで出掛けて,ついでに食事をし,レジャー感覚で楽しんでいます。

研究から得られる幸せ

つらいこともありますが,試行錯誤を重ね「実はこうなっているんだ」とわかった時はとても嬉しくなります。「時間発展法」の開発時,それまで使われていなかった手法を取り入れて成功したことがありました。うまくいった理由がわかった時,本当に感動し,時間発展法を確立させて世に役立てたいと決意を新たにしました。

若い方には視野を広くもってほしい

いろんなものに興味をもって幅広く知識を集め,やりたいこと見つけて取り組んでほしいです。自分の専門に行きつくまでに,他のことや全然違うところへ広がっていくこともあるので,自分の可能性を狭めないでほしいと思います。アンテナを張って色々なことを取り入れると,柔軟に生きていける人になるのではないかと思います。

 

理学部広報誌「彩」第4号(2019年2月発行)掲載。>理学部 広報・刊行物

※肩書,所属,学年は広報誌掲載当時のものです。

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