実験をしない?!コンピュータ化学

化学科/量子化学研究室 武次徹也教授

化学といえば,試薬や実験器具機器に囲まれて実験しているイメージが強いかもしれませんが,私たちは理論系の研究室なので実験は行いません。

では,何をしているのかというと,コンピュータを利用して物質が原子・分子・電子レベルどうふるまうのかを研究しています。

調べたい物質の構造を量子力学の方程式に当てはめて計算できるプログラムを開発し,シミュレーションを行います。20年前までは,コンピュータでは実験の結果を理論的に確かめることが精いっぱいでしたが,今では分子理論の発展とともにコンピュータの速度が大幅に向上したこともあり,実験の結果を予測できる時代が始まっています。例えば,ある物質に光を当てたときに起きる「光反応」をコンピュータで調べるプログラムを組み,光によって励起した後の分子の動きを調べる研究を行っています。分子は,千兆分の1秒というとても短いタイムスケールで動いているのですが,光のエネルギーを吸収すると分子の中で一瞬のうちに電子の配列が変わり,結合が切れたり新しい結合ができたりなど変化が始まります。人間の感覚からすると一瞬の出来事をコンピュータで調べるのです。高校の教科書に載っている化学反応は「A+B→C」ですが,私たちは「どうしてCになるか」をコンピュータでシミュレーションすることで,分子レベルで何が起こっているかを観ています。

理学部化学科では,理論化学の研究を行うことのできる研究室が4つもあります。これは,国内・国外の大学を見渡してみても北大理学部にしかない大きな特徴です。多くの優秀な先生や学生が集まり,世界最先端の研究を日々行っています。そして,実験系の研究室としっかりと協力して,世界に誇れる成果を今後も出していきたいと考えています。

スチルベン分子の光反応のエネルギー準位図

理学部広報誌「Sci」第1号(2017年8月発行)掲載。>理学部 広報・刊行物

※肩書,所属,学年は発表当時のものです。

LATEST TOPICS