実はまだわかっていない液体の物理学

物理学科/凝縮系ダイナミクス研究室 野嵜龍介教授

「凝縮系」という言葉には物理学的には一般的に使われる言葉です。物質は原子・分子が集まってできているものですが,その密度が高いものを凝縮系といっています。凝縮系のミクロな運動性を凝縮系ダイナミクスと呼んでいます。

理科の教科書で物質の三態は気体・固体・液体と習います。物理学的に気体・固体については研究されていますが,液体については実は取り残されている分野です。その取り残されている液体や液体に近いものについて研究しています。

窓ガラスを考えてみてください。厚さが均一な硬い板状です。ところが,中世に作られたステンドグラスの厚さを上の方から順に測っていくと,下の方だけ厚くなっています。これは製造時の状況などでガラスが長い時間をかけてゆっくりと下の方に流れたことを示しています。なぜかというと,ガラス板を作っている分子構造すべてが規則正しく並んでいなくて,分子が動けるような構造のランダムさがあるからです。見た目は固体のガラス板も分子レベルで見ると実は液体なのです。

物理学は自然現象の不思議を理解し,解き明かそうとする学問です。そして,サイエンティストとして知的好奇心が満たされていく喜びもあります。

私たちは分子運動の観点から液体を研究しています。液体の研究は広い範囲で私たちの身体,生命現象の研究にもかかわっていると考えています。将来的に生命活動を物理のレベルで解明できるかもしれません。今後も液体の研究を通して,自然現象の不思議の解明を目指していきます。

 

理学部広報誌「Sci」第1号(2017年8月発行)掲載。>理学部 広報・刊行物

※肩書,所属,学年は発表当時のものです。

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