自分で決めたルールを守りながら、目標に向かう化学研究と陸上競技で世界に挑む

総合化学院 修士2年 高橋佑輔さん

理学部化学科を卒業し、現在、総合化学院 修士2年の高橋佑輔さん。2023年6月2日の第107回 日本陸上競技選手権大会 男子1500m決勝で見事、準優勝しました。また、2023年7月のバンコク2023アジア陸上競技選手権大会の日本代表選手に選出されました。研究生活を送りながら、トップレベルの陸上競技を続ける高橋さんに話を聞きました。

北海道大学の緑のユニフォームでトップ争いをする高橋さん(右から3人目)
学業と陸上を続けている高橋さんの大学受験はどうでしたか?

高校3年生の11月まで部活で駅伝競争をしていて、その後、本格的に受験勉強に取り組みました。部活をやっているからといって勉強ができないわけではないので、それまでも勉強と陸上はずっと両立していました。当時、北海道へは漠然とした憧れがあり、化学と物理が好きだったのでより深く学べる北大の理学部を選びました。実際に進学したら、やはり大学の化学や物理は高校の授業と違って驚きましたし、実験などはとても楽しかったです。

4年生での研究室配属と大学院進学について

4年生で研究室を選ぶ中で、難しい内容、自分が分からない内容が逆におもしろいな、知りたいなと思い、分析化学研究室を選びました。主に光化学と言われる分野で、学部時代は授業の中であまり扱われなかった内容にも興味を持ちました。また、部活動と研究の両立にもチャレンジさせてもらえる研究室を希望しました。そのために研究室見学をしたり、部活の化学科の先輩に話を聞いたりするなどの事前リサーチをしました。理系なので3年間(4年生と修士課程の2年間)はしっかり研究をしたいと思っていたこともあり、修士課程への進学はもともと決めていました。

指導教員の上野貢生教授(左)「高橋くんは、スポーツマンで大変優秀な学生です。」研究室のある理学部6号館の前で。
研究内容を教えてください

半導体の上に金ナノ構造を作ることによって光学特性がどう変わるかを調べています。TMDC(遷移金属ダイカルコゲナイド)と呼ばれる今注目されているとても薄い半導体を使っています。半導体なので光を当てたら光電変換素子になりますし、電圧をかけたら逆に発光します。そこに金ナノ構造を重ねてヘテロ構造を作り、新しい機能の創出を目指しています。この研究テーマに取り組み始めて最初の1年間はあまり成果が出ずつらい時期もありましたが、2年目からは成果がちょっとでも出てくるとモチベーションアップにもつながります。実験結果が予想と違っても、なぜそうなったのかを考えるのが、研究の醍醐味でしょうか。大学や大学院に進学した意味を実感できています。この1年ほどで成果がまとまってきたので、2023年7月末に札幌で行われる国際学会でポスター発表をする予定です。世界から集まる多くの研究者と議論が重ねられることを期待しています。とても楽しみです。

陸上と研究に対する取り組み方の共通点

自分で決めたルールを守りながら目標に向かう点は、研究でも陸上でも共通していると思います。

研究生活は修士2年まで、そこまでにある程度の成果を出すことを、ゴールと決めてモチベーションを維持しています。しかし、研究はやはり難しく、最初は研究内容が分かっていなかったので、その勉強からスタートしましたし、実験も思い通りにいかないこともありました。最近になってある程度達成できてきたところは嬉しいです。

陸上に関しては、大学院修了までの6年間の目標を大学入学時に立てました。例えば1年生のときは受験期のブランクがあるので、まずは環境に慣れるために少しトレーニングを軽めにしよう、2年生でベストタイムを出して、3、4年生で全国大会出場などという大まかな目標を立てました。その中で短期的な目標、例えば1,500mを専門に走っていますが、800mや5,000mについても、この時期はこれぐらいのタイムで走り、このタイミングでベストタイム出すというように、その都度その都度、課題設定して少しずつ力を伸ばしていくようにしています。

CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)作業の準備をしているところ。電子天秤で精密に測定する。
研究と陸上の両立による相乗効果はありますか?

どちらも楽しいことやいいことばかりではありません。そのような時に一方に集中したら、もう一方を一時忘れられていい気分転換になります。一つだけにのめり込むと悪い方向ばかりに行くこともあるかもしれませんが、そうならないのは、両立しているからこそだと思います。

後輩へのメッセージ

大学の研究室は、研究のためにあるところなので、そこを第一優先にしてください。その中で課外活動などをしたいのであれば、きちんと指導教員に相談し、理解してもらった上ですることが大事です。ほうれんそう(報告・連絡・相談)を常に意識して、先生や研究室の仲間としっかりコミュニケーションを取ってください。両立する中で、どうしても課外活動に割かなければいけない時間が出てきます。それ以外でどれだけ研究時間を確保できるかが大切になるので、自分で時間を見つけて、やりくりすることが両立の上で重要だと思います。

 

今後は?

来春、就職しますが、実業団ではなく市民ランナーとして陸上競技を続けたいと考えています。人生の4分の1を過ごした北海道は大好きなので、卒業後も遊びにきたいです。

高橋佑輔(1999年生まれ、兵庫県出身)
陸上1500mが専門。尊敬する選手はモハメド・カティル(スペイン)。走り方・競技スタイルを直感的にかっこいいと感じた。趣味は温泉、旅行。いずれは登山もしたい。

上野貢生教授より(指導教員:理学研究院化学部門)
高橋君は真のスポーツマンで、かつ勉強も研究もよくできる非常に優秀な学生です。毎朝10km走ってから研究室に来て、夜も走った後に戻ってきて実験することもあります。今時の言葉で言えばまさに「二刀流」でしょうか。国際学会での研究発表と、陸上のアジア大会の日程が近いですが、両方頑張ってもらいたいです。

 

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(学年、所属はインタビュー当時のもの)

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