自信を持ち続けてください

木村 敦 教授(生物科学科/生物学)

いまこそ「友」
コロナ禍に見舞われ、かつてなく「孤独」「孤立」が問われています。いまこそ友人や仲間との思い出、会えなくてもつながっている心強さ、リアルに会うことの大切さなどを感じるときです。研究者も時には悩み苦しみ、そして仲間に支えられ豊かな経験をしています。各学科の教員に話を聞きました。

【生物科学科/生物学】木村 敦 教授
青森県弘前市出身。北大生物学科卒業。津軽弁は多分通じないだろうと思って大学に入学したら、案の定、通じなかった。

生き物好きからゲノム研究の道へ

子供の頃は、近所で昆虫や小動物を捕まえては家で飼っており、生物学を志す土台はその頃にできていました。母によると小学生の頃「博士になる」と言っていたそうです。その後、生物の生態や行動に加え、自分を操る「ゲノムDNAの機能」に興味を持ち研究の道へ進みました。

影響を受けた出会い

高校の生物担当で担任の阿部東先生は、教員の傍ら弘前大学でチョウの研究をしており、生物学研究の面白さを語ってくれました。先生との出会いで、研究や研究者を具体的にイメージできるようになり、その後の進路決定を後押ししました。当時を振り返り改めて感謝しています。

ポスドクを過ごしたペンシルベニア大学のステファン・リーブハーバー教授/ナンシー・クック教授夫妻からは、研究をいかに深掘りして、いかに高いレベルにするかを学びました。当時同じ研究室にポスドクが10名程いて、お互い切磋琢磨しながら研究を進めたのもよい経験でした。現在それぞれが一線で活躍しており、今でも交流を続けたり論文で名前を見て刺激を受けたりしています。リーブハーバー教授は研究者としても人としても尊敬でき、彼の研究室は雰囲気を含めて私の理想形です。この出会いと学びを研究者人生に生かしたいと思っています。

リーブハーバー/クック教授夫妻(写真中央)の研究室メンバーと共に。右から5人目が木村本人。
批判を乗り越えて

自分の研究室を持って最初に苦労したのは「あなたの研究は意味がない」と批判されたときです。今ではよく知られている、タンパク質を作らないノンコーディングRNAの研究は、私が始めた2000年代はまだ理解を得にくかったです。新しいことに批判はつきものですが、当時はかなりつらい思いをしました。しかし、学生たちがあきらめずに研究を進めてくれ、論文発表を続けられました。さらに、卒業生の繋がりでサントリー生命科学財団の佐竹炎先生が私の研究の価値を認めてくれたのを機に、共同研究者が徐々に増えていきました。理解と協力のおかげで、自分の研究の方向性に自信を深めると同時に、研究の幅を広げることができました。苦労を共に乗り越えた歴代の研究室メンバーと、共同研究者の支えには心から感謝しています。

卓球がよい刺激に

小学5年生から高校3年生まで卓球部に所属し、現在も札幌市のクラブチームでプレーしています。体力的にも精神的にも非常に健康によく、プレーだけでなく雑談を交えた交流は、新しい発見や楽しみをもたらします。研究にもよい影響を与えています。今後も大切にしたいつながりです。

自信を持ってください

あなたの好きなようにやってください。それだけです。批判はあるでしょうが、最初は気にせず自分を信じましょう。失敗したら、そこで軌道修正すればいいのです。ほんの小さなことでも結果が出れば、その価値を認めてくれる人は必ずいて応援してくれます。あなたの信じる道が世の中を変えるかもしれません。


理学部広報誌「彩」第8号(2022年8月発行)掲載。>理学部 広報・刊行物

※肩書、所属は、広報誌発行当時のものです。

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