学生時代にコロナ禍を経験しました

島尻 拓哉 特任助教(化学科)

いまこそ「友」
コロナ禍に見舞われ、かつてなく「孤独」「孤立」が問われています。いまこそ友人や仲間との思い出、会えなくてもつながっている心強さ、リアルに会うことの大切さなどを感じるときです。研究者も時には悩み苦しみ、そして仲間に支えられ豊かな経験をしています。各学科の教員に話を聞きました。

【化学科】島尻 拓哉 特任助教
北海道帯広市出身。北大化学科卒業。28歳。高校・大学ではハンドボール部に所属。最近は健康のためにテニスを始めた。

総合理系、部活での出会いは一生もの

この春に博士号を取得したばかりの28歳です。もう10年ほど北大に在籍しています。友人と聞かれて真っ先に思い浮かぶのは、細木拓也君と小野紘貴君です。細木君は1年生の総合理系のクラスメイトです。北大の1年生は教養課程としてクラス分けされ、その後2年生で専門分野に進みます。ですから、1年次の友人とは異分野の話ができとても貴重な経験をしました。中でも細木君は僕と同じようにアカデミアを目指していたので気が合いました。彼が水産学部へ進み3年次から函館キャンパスに行った後も札幌と函館を行き来して交流を楽しんでいました。僕の研究は実験メインのインドア派ですが、細木君はフィールドで魚相手のアウトドア派なので、お互い刺激しあえる関係でした。

小野君はハンドボール部の仲間です。出会いは部活でしたが、彼も偶然アカデミア志向で、何でも遠慮なく話し合える関係性を築けました。

細木君は国立遺伝研究所、小野君は京都大学、僕は北大でそれぞれ研究を続けていて、今でも研究のこと、アカデミアのつらさ厳しさやプライベートの悩みも話せます。共に似た境遇や価値観を持っているので心強いです。

北海道せたな町の太田山神社にて。細木くん(右)と一緒に。
一人ではできない

研究とハンドボールには共通点があります。ハンドボールは一チーム7人がお互い意思疎通を図って守って攻めます。一方で個人の得意技を持つことも必要です。僕は得意のディフェンスを生かしてプレイしていました。

専門の有機化学も、多くの人が関わり、それぞれの得意技を持ち寄って一つの仕事を作り上げていきます。僕は炭素-炭素結合の長さを伸ばす研究で、2018年と2020年に大きな論文を出しました。指導教員の鈴木孝紀教授や石垣侑祐准教授と多くの議論をし、研究室のチームワークを生かしてこの研究を進めることができました。

指導教員の鈴木孝紀教授(中央)と石垣侑祐准教授(右)
コロナ禍を経てハードルは下がった

学生時代にコロナ禍を経験しました。コロナ禍前は人との関係性はより親密で、一緒に食事やお酒を飲みながらできた友人は何ものにも代えがたいです。その後、新しい友人ができたかと聞かれると、正直よくわかりません。

一方で、コロナ禍でオンライン化が進み、研究においては研究者との交流の場が圧倒的に増えました。現場に直接行かなくていいので、時間的、経済的負担が減り、学会参加数は2倍以上に増え、オンライン講演会や交流会なども気軽に参加できるようになりました。何度も参加していると顔なじみもできるかもしれません。今後はオンラインで知り合った仲間たちと実際に会って、より関係性を深めていきたいと思っています。

理解と共感に支えられる

同じ研究分野で知り合いを作るのも必要ですし、何かのコミュニティに参加して友人を作るのも大切だと思います。些細な悩みかもしれませんが、同じ研究室のメンバーには話せないこともありますよね。そのような時に僕にとっての細木君や小野君のような人がいると、何でも聞いてくれるので精神の支えになります。そんな友人がいて幸せ者です。


理学部広報誌「彩」第8号(2022年8月発行)掲載。>理学部 広報・刊行物

※肩書、所属は、広報誌発行当時のものです。

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