いまこそ「友」
コロナ禍に見舞われ、かつてなく「孤独」「孤立」が問われています。いまこそ友人や仲間との思い出、会えなくてもつながっている心強さ、リアルに会うことの大切さなどを感じるときです。研究者も時には悩み苦しみ、そして仲間に支えられ豊かな経験をしています。各学科の教員に話を聞きました。
【物理学科】日髙 宏之 助教
野生馬が生息する都井岬がある宮崎県串間市出身。43歳。研究室での飲み会ではリクエストされた料理をつくってふるまう。
真実を知りたい共通認識
物理学者の多くがそうであるように、僕も小さいころから自然や宇宙が好きでした。特に中学生の頃に見た番組「アインシュタインロマン」に感銘を受け、物理や数学の世界にハマっていきました。物理学者は不思議なことに対して「何が起きているのか」「実態は何か」「現象に法則性はあるのか」を知りたいと考えています。大事なのは自然界の摂理が明らかになっていくことで、この共通認識を持っているのが物理学者の仲間です。
やっぱり直接会うと嬉しい
コロナ禍前は学会や研究会に数多く参加し、大御所の先生や同年代の仲間と数多くの交流をした経験があります。同年代でバリバリ研究している人から刺激を受けることもありました。論文で名前を知っているだけの研究者に学会で実際に会うと嬉しいですね。
「あなたがあの〇〇さんですか!」「あなたの論文読みました!」という予想外のつながりもあります。懇親会があるとさらに交流が深まります。やはり直接会うことでその人のキャラクターも分かりますし、相手を知ると、その後はオンラインでもスムーズに話しができます。だからこそ対面の学会は重要だと感じます。
研究は一人で勉強したり考えたりする時間も必要で、孤独な側面もあります。一方、自分で発見したことを発表して、他の研究者から評価されると非常に嬉しいです。人間ですからシンプルに承認欲求のようなものかもしれません。特に学生の頃はそれが成功体験になってモチベーションアップにつながります。今でも若い頃から付き合いのある仲間と学会で再会して、最近どう? なに研究しているの? と近況報告しあうことで、研究への原動力としています。
しかし今の学生さんはコロナ禍でリアルに交流する機会が失われて、気の毒だと思っています。研究室の外の人との関係性を築けるようにサポートしたいと思います。
飲みニケーション
料理とお酒が大好きです。研究者仲間とはもちろんですが、専門以外の人と話すこともとても面白いし人生の幅が広がります。お互いのキャラクターを知ることで相手をより理解できるし、受け入れられるようになります。同僚の柳澤達也さんとは、年も近いし同時期に北大に来たこともあり、何度も一緒に飲みました。ですから、柳澤さんと僕の間には遠慮がなく、研究の議論を激しく闘わせることができます。周りから見るとハラハラすることがあるかもしれませんが、信頼関係があるので大丈夫です。
学生さんにもぜひ本音で語り合える友人を見つけてほしいです。コロナ禍をきっかけに広がったオンラインでの交流は便利ですが、やはり限界がありますよね。表情を見たり生の声を聞いたり五感で多くの情報が得られます。これから少しずつ食事や飲みに行ける日が戻ってくることを心から願っています。
理学部広報誌「彩」第8号(2022年8月発行)掲載。>理学部 広報・刊行物
※肩書、所属は、広報誌発行当時のものです。