未来を切り拓く女性たち
女性が研究や技術開発に生きがいをもって打ち込める社会、女性であっても昇進や活躍の機会が奪われない社会、一人ひとりが自分のライフステージの移行とともに生活と研究のバランスを柔軟に選択できる社会、そんな社会を実現し、次世代を担う学生や子どもたちに見せていきたいと考えています。今回の特集では勉強や研究に励んでいる女性たちにスポットをあて、進路・研究を始めたきっかけや、趣味、将来の目標など、幅広く紹介します。
「今は頑張る時期!」さらりと話す石原さんは現在の研究テーマを論文にまとめて出すことを目指して日々研究に励んでいます。
好奇心を育ててくれた先生との出会い
もともと生物の中でもスケールの小さいものが好きでした。「DNAの仕組みはすごい」と感動したことがあったそうです。高校3年生の時は生物を中心に勉強していました。ところが当時の生物科目を担当していた先生の専門は化学だったのです。しかも化学の知識を用いて,教科書や受験の範囲を超えた専門的な内容を話すちょっと面白い先生でした。
放課後は必要な材料と危険点の注意だけを与えてくれて,実験室で自由に実験をさせてくれました。授業を通して「化学など他の学問から生物を調べるとより深い理解ができるかもしれない」と思ったことと,未知の世界を実験で検証していくことのワクワク感が,研究者を目指すきっかけとなりました。
細胞の形作りについて研究
細胞が形を作り出す過程を研究しています。平らな細胞のシートを軟らかいコラーゲンゲルに挟むと,細胞は折りたたむように動き出してチューブ構造へと変形します。その過程と仕組みについて,博士1年の時に論文を出しました。今は,コラーゲンゲルとは別の培養環境の中で,細胞のシートがどのように変形するか研究しています。これは再生医療の基礎にあたります。現在の再生医療では,臓器の形の再現はまだ難しいので,自分の研究がその一助となることを願っています。
好きなことを好きなだけやれる幸せ
所属する研究室はフレックスタイム制なので,必ずこの時間に来なければならない,というルールはありません。自由度が高い分,自分でしっかり時間管理することが求められます。実験,ディスカッション,論文を読むのが毎日の過ごし方です。研究は楽しくてたまらないので「一日中好きなことにどっぷり浸かって過ごしています」と屈託ない様子です。
料理と編み物で気分転換
研究中心の生活をしているので,今はそれ以外の時間をなかなか取れないのですが,料理や編み物,体を動かすことが趣味です。料理は作るのも食べるのも大好きで,最近は弁当作りにはまっています。自分で編んだ帽子を身につけて大学にも来ます。セーターも作りかけのものがあるのですが,今の研究がひと段落つくまでは手を付けらません。もう少し時間がかかりそうです。また,おいしいものを食べると「幸せ!また明日から頑張ろう!」と前向きな気持ちになれます。
謎を解き明かす。そのプロセスがすべて楽しい
「目の前のわからないことを解き明かすのが楽しい」と研究の魅力を語ってくれました。RPGゲームに例えるなら,敵(未知の現象)を見つけ,武器(実験技術)を身につけて,レベル(知識・論理力)を上げてボスを倒す。このエンドレスループだと言います。中ボスは論文執筆,ラスボスは常に現れる様々な不思議。ラスボスは一生かかっても倒すことはできないかもしれませんが,そのプロセスがすべて楽しいそうです。
これからサイエンスを目指すみなさんへ
研究はトライアル&エラーの連続です。作戦を立てて,実行して,成功または失敗を繰り返します。そして,常に新しいことを見つけていかないと,先に進めません。その新しいことを見つけて,起きている現象に気づく心がとても大事です。これらの気持ちは宝物のように私には思えます。どんなことでも興味があったら,ためらわずに,まずやってみてほしいです。そして「研究って楽しいよね!だよね!」って一緒に盛り上がりたいです。
理学部広報誌「彩」第4号(2019年2月発行)掲載。>理学部 広報・刊行物
※肩書,所属,学年は広報誌掲載当時のものです。