夢は好奇心を生かして,世の中に良い影響を与えること
生命現象の未知の仕組みを明らかにしたい

生命科学院 生命科学専攻 生命システム科学コース 長谷川 陽子さん(博士後期課程2年)

未来を切り拓く女性たち
女性が研究や技術開発に生きがいをもって打ち込める社会、女性であっても昇進や活躍の機会が奪われない社会、一人ひとりが自分のライフステージの移行とともに生活と研究のバランスを柔軟に選択できる社会、そんな社会を実現し、次世代を担う学生や子どもたちに見せていきたいと考えています。今回の特集では勉強や研究に励んでいる女性たちにスポットをあて、進路・研究を始めたきっかけや、趣味、将来の目標など、幅広く紹介します。

研究対象として植物を扱っていますが,観察対象としてなら動物のほうが好きだという長谷川さん。実験手法を学ぶために,半年間のフランス留学から帰国したばかりの若き研究者です。

生物の観察が好き

子供のころから生き物の観察が好きで,特に悩むこともなく生物系に進みました。実は考古学にも魅力を感じていたそうですが,ミイラが苦手なので断念。大学に入ったころは学校の先生になるのも憧れていましたが,学部3年の頃に研究職に強く興味を持ちました。そして,4年生で配属した研究室では植物を扱っていて,そこでの研究が面白くて今も続けているそうです。

植物の研究

「シロイヌナズナ」というモデル植物を使い,植物の環境応答の仕組みの解明を目指しています。現在は生物の主要な構成要素である炭素と窒素栄養に応じた,植物の細胞内における物質輸送の制御機構に着目して解析を進めています。

フランスへ留学

研究を進めるための実験を考えていたときに,ぴったりの手法を使っている論文を見つけました。著者は知らない人でしたが,実験を教えてもらえないかとメールを送ったところ,承諾してもらえました。その時JSPS(日本学術振興会)主催の「若手研究者海外挑戦プログラム」という留学支援事業を見つけて応募し,採用されたので,フランスへ半年間の留学をしました。留学してすぐ,受け入れ先の指導教員(男性)にお子さんができ,3か月の育児休暇を取ることが決まりました。どうなることかと不安でしたが,初めに実験を教えてもらい,育児休暇に入った後は必要に応じてメールでやり取りし,週に一度はミーティングをしたので,問題なく研究ができました。この指導教員に限らず,子どものいる家庭では,両親が協力して仕事と子育てを両立させるのが一般的でした。人々がワークライフバランスの取れた生活を送り,なおかつ社会がしっかり回っていくフランスのあり方に感動したそうです。

飛び上がって喜ぶことも

大学では日々実験,植物の世話・観察,研究内容を伝えるためのスライド作りや論文のチェックをして過ごしています。自分の仮説をサポートするしっかりとしたデータが得られた時は,一緒に解析をした後輩と飛び上がって喜びました。結果がついてくると,とても嬉しいものです。その一方で,実験の失敗の原因がなかなか分からない時はとてもつらくなります。

読書で気分転換

気分転換はお風呂に入ってまったりしたり,居酒屋でおいしいお酒を飲んだりすること。読書に没頭するのも気分転換になり,本はどんなジャンルでも読みますが,小説や絵本を中心に,何となく心惹かれた古本を読みあさるのが趣味。また,休日に絵を描くこともあるそうです。

科学の発展に貢献したい

夢は自分の好奇心を生かして,世の中に何か良い影響を与えることです。自分の行う基礎研究は,直接人の命を救いはしません。それでも今の生活を支える技術は,先人が地道に積み上げてきた基礎研究の成果の上に成り立っているものです。私も,生命現象の未知の仕組みを明らかにすることで,すこしでも科学の発展に貢献できたらと思います。願わくは,バックグラウンドの異なるいろいろな人たちの間をつないで,いつか何か新しいことをしたいです。

 

理学部広報誌「彩」第4号(2019年2月発行)掲載。>理学部 広報・刊行物

※肩書,所属,学年は広報誌掲載当時のものです。

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