【後編】「理学を選んだ理由」堀口健雄理学部長学生による座談会

北海道大学理学部への志望理由も所属分野も異なる6人の学生たちに大学生活や将来への思いを語ってもらいました。

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堀口健雄(ほりぐちたけお)
理学部長

理学研究院 生物科学部門多様性生物学分野教授。
専門は藻類・原生生物を対象とする多様性生物学、葉緑体進化学など。

 

 

 


堀口理学部長への質問

佐々木 堀口先生が僕たち学生に求めていることは何でしょうか。

堀口 理学というのは、自分の好奇心に基づいて自然の謎、数理の謎を解くという学問です。「なぜ?」を発見し、解決方法を考え、解を見つけ出す能力を身につけてほしいと期待しています。学科によって扱うテーマは違いますが、基本的な姿勢は同じです。問題探求能力や、解決能力というのは、社会に出たときにも非常に役に立つので、理学部にいる間にしっかり鍛えてください。

有川 理学部で自然の謎の解明を目指して学ぶうちに、「科学って何だろう?」と考え込むことがあります。先人たちが培ってきた知識が間違っているとは思いませんが、一方で科学は絶対ではないと感じる時もあります。先生はどのように科学と向き合って研究をされているのでしょうか。

堀口 「巨人の肩の上に立つ」という言葉があります。それまで積み上げられてきた知識体系を理解し、さらに解らないことを追及する、ということの繰り返しではないでしょうか。先人の実績が必ず正しいわけではないので、積み上げられてきた科学への問いかけも行います。新たな発見があると、これまでの知識体系が一段積み上がり、それが人類共通の財産になります。それがすぐ社会の役に立つかどうかは別として、その知識体系を増やす社会貢献が科学の意義だと思います。

長谷部 英語についてお伺いしたいと思います。先生はポスドク*1で3年間海外にいらしたとお聞きしているのですが、どちらだったのですか。

堀口 南アフリカにいました。

長谷部 私たちの日ごろの授業では、英語に触れる機会というのがどうしても少なく、専門科目も日本語で行われることが多いので、英語の能力を維持し続けるのは相当意識しないと難しいと感じています。能力を維持するためのよい方法はないでしょうか。

堀口 南アフリカにいた時、実際に会話が楽にできるようになったと感じるようになったのは、2年目からと記憶しています。英語のスキル維持に関しては、英語の授業はできるだけ増やしていくという、大学としての方針があります。理学部でしたら、ISP*2の学生向けの英語で行われる授業は日本人学生もとれることになっているので、英語に触れる機会が徐々に増えてきています。化学科にもISPの学生がいるので、積極的に会話をして、たくさんいる留学生とコミュニケ―ションをとってみるのが、一番実践的で有効なのではと思います。やはり、英語は自分から主体的にやらないと身につかないので、英語のニュースを読んだり聞いたりするなど、自分自身でやろうという気持ちを持って取り組んでいってほしいと思います。

*1 ポスドク:「ポストドクター」の略。博士の学位を取得した後、日本国内や世界中の大学や研究所、企業などで、主に期限のついた研究プロジェクトに従事する研究者のこと
*2  ISP:Integrated Science Programの略。外国人留学生向け理系学士・修士課程の英語プログラム

新渡戸カレッジと留学

堀口 五藤さん、新渡戸カレッジ*3を履修した感想を教えてください。

五藤 多くのことを学ぶ機会をいただきました。この夏(2019年)、アラスカに短期留学し、生態系、野生動物管理について学んできました。最終日のプレゼンテーションの時に、外国の研究者と意見交換をしたら、いままでの勉強を客観視できたり、新しい発見があったりして、有意義に過ごすことができました。2週間の滞在中はフィールドワークが多く、森林の生態サイクルを学びながら、その場で現象を見ることができました。リアルな体験がフィールドワークの醍醐味だと感じました。

堀口 大野さんも留学を検討しているそうですね。

大野 はい。私は欧米に憧れを持っています。そして、物理の中でも宇宙物理を学びたいです。宇宙や気象の研究を、海外に行って様々な文化に触れながら学んでみたいです。

*3 新渡戸カレッジ…北海道大学12学部での教育にプラスして、グローバル社会で活躍するために必要なスキルとマインドを身につける学部横断的教育カリキュラム。

学部での学びの「そのさき」

堀口 学部を卒業した先をどのように考えているか、聞かせてください。

佐々木 高分子は研究室配属が早くて、三年生の冬ターム(12月)から研究室に入ります。配属先が希望通りいけば大学院に進みたいのですが、修士で終えるか博士まで行くかまだ悩んでいるところです。

有川 地球惑星科学科の研究室配属は四年生になってからなので、まだ決めていません。最初は宇宙関係の研究室に行きたいと思っていましたが、様々な分野を学ぶ中で、地質の研究も楽しそうで、迷っているところです。大学院まで行きたいと思っていますが、博士には進まずに、自分が理学部で学んだ経験を生かした上で、科学コミュニケーションを実践できる職に就きたいとも考えています。

浅野 大学院へ行きたいのですが、修士で終えるか博士まで進むかは決めていません。その後は高校の教員になりたいです。いまは、自分がどれだけ数学の研究をやれるか分かりませんが「教員になりたい」という気持ちだけは強く持っています。

五藤 博士まで進みたいです。行動生態学の勉強は楽しいですが、研究を続けると、辛いことや大変なこともあると思います。修士で学んだ後で、研究職を目指すか考えてみます。

長谷部 これから各研究室を見学して配属先を決めます。特に、武次徹也先生をはじめとする、計算化学系の研究室に興味を持っています。四年生の卒業研究だけでは研究期間が短いため、化学科は修士に進学する学生が多いです。最近、分野ごとに学んだ知識や考え方が自分の中で体系化されているという実感があるのでそれを深めながら進学について考えたいです。

大野 博士課程まで進みたいと思っていますが、物理に残るか地球惑星系に移るかという悩みがあります。物理学科の先輩から、勉強と研究の違いを聞きました。まずは研究室に配属されてから、今後のことを決めたいです。

堀口 今、大野さんが話してくれましたが、大学院から別の分野に進むということも一つの選択肢として、頭に入れておくといいかもしれません。

「一日一発見」の勧め

堀口 今日は、ありがとうございました。皆さんが前向きな学生生活を送っている様子を知ることができました。これから研究室に入って、研究に携わっていく中で、大変なこともあると思います。しかし、その先で、今まで誰も気づかなかった知見に出会い、成果を残せるかもしれません。みなさんの活躍が楽しみです。

最後にみなさんへ伝えたいメッセージがあります。それは「一日一発見」の勧めです。他の人が知っているかどうかは関係なく、一日ひとつは自分自身にとっての新しい発見をしようではないか、という事です。実験中に得た気付きでも構いません。そのように毎日、新しいことに出会うと成長しますし、小さな発見の積み重ねの研究生活の中で、ある日、本当に世界で初めての発見に出会うかもしれません。そのためには、論文を読み、ジャンルを問わず読書をし、手を動かして実験をするなど実践を重ねてください。実践なしで発見はありません。そして、ぜひ「一日一発見」を続けながら学生生活を送ってください。

※本コンテンツは理学部広報誌「彩」第6号に掲載された特集に加筆修正したものです。また、学年は広報誌掲載当時のものです。

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