【前編】「理学を選んだ理由」堀口健雄理学部長学生による座談会

北海道大学理学部への志望理由も所属分野も異なる6人の学生たちに大学生活や将来への思いを語ってもらいました。

理学部に在籍している学生は995人*。夢や希望をもって北大に入学し、2年次から各学科・専修へ配属され勉強や実習に取り組みます。その間には、楽しいこともあれば、悩んで立ち止まってしまうこともあるでしょう。今回は堀口健雄理学部長と学部3年生の座談会を通して、飾らない彼ら彼女らの「いま」と「これから」を紹介します。*2~4年生の合計(2019年5月1日時点の集計数)


堀口健雄(ほりぐちたけお)
理学部長

理学研究院 生物科学部門多様性生物学分野教授。
専門は藻類・原生生物を対象とする多様性生物学、葉緑体進化学など。

 

 

 


北海道大学理学部に決めた理由

堀口 はじめに北大への進学や理学部を選んだ理由、そして出身地を教えてください。

大野 大阪から夏の「オープンキャンパス」に訪れ、キャンパスの広さと自然の豊かさ、歴史的建造物に魅力を感じて、北大で学びたいと思いました。私には宇宙や気象の分野を研究したいという夢があり、そのためには物理の学びが必要なので物理学科を選びました。

長谷部 大学生活をするなら、実家のある東京とは環境が大きく変わる北海道で一人暮らしをしたいと考えていました。大野さんも言っていましたが、広大なキャンパスで学生生活を送ってみたかったのです。学科は物理学にも興味がありましたが、大学での「化学」は、高校で暗記事項だったことにも理論づけがされていることを知り、幅広い分野を扱う学問でもあることに魅力を感じて化学科を選択しました。

五藤 愛知県出身です。高校の時から動物の行動生態に興味があって、特に動物のコミュニケーションに詳しい先生を探していたら、北大に相馬雅代先生がいることを知り、生物科学科を選びました。

浅野 札幌の隣の石狩市出身です。200万都市札幌の中心にある「北海道大学」に大きな憧れがありました。あと、子どもの頃から数学が扱う世界が好きで、大学でさらに学びを深めたく数学科を選びました。

有川 三重県の中高一貫校に通っていて、中等部3年次に入った天文部で、宇宙に強い関心を持ちました。ちょうどその頃『宇宙の渚スペシャル』というテレビ番組を見て感動し、いろいろと調べてみたら、北大の地球惑星科学科ではフィールドワークを通して多くのことを学べることを知り、進学したいと思いました。

佐々木 高校の模試で志望校を絞る時に悩みました。ちょっと場当たり的でしたが、一番名前が長くて目立っていた「北海道大学理学部生物科学科高分子機能学専修分野」を選んだのがきっかけです。いま振り返ると、物理と化学が得意で、生物は不得意でした。でもそんな僕が生物の分野に進んだら、新しい何かを発見できるかもしれないと思いました。

一年次の過ごし方

堀口 有川さんはAO入試*1で入学しましたが、一年生の時どのように過ごしましたか。

有川 学科60人中、一年次から進む学科が決まっていたのはAO入試で入ってきた5名と、後期入試*2の5名を合わせて計10名でした。少ない仲間ですが、地球惑星科学に関する興味ある話題をたくさん共有できて楽しかったです。さらに、基礎的な勉強をしたり、それに関連する本を図書館で借りて読んだり、やりたいことに対して使える時間や気持ちの余裕があって良かったと思っています。

堀口 大野さんは総合理系*3で入学しましたね。いかがでしたか。

大野 入学時から物理学科か地球惑星科学科に行くと決めていました。ですから、有川さんと同様に、自分の時間を作って、高校で不足していた物理の勉強に集中しました。

堀口 後期入試の浅野君は、最初の一年次をどのように過ごしましたか。

浅野 大学の授業を受けて、そのあと塾のバイトに行き一日を終える生活をしていました。教職課程を取っていたので、教育学系の授業も数多く履修し、幅広い分野を知ることができたことは良かったです。

*1 AO入試:受験生の能力や資質を多面的に評価する入試制度。理学部は学科別に募集。二年次以降に合格した学科に進級することが決まっている。
*2 後期入試:一般入試・後期日程。学部別入試で行われ、理学部は学科(専修分野)別に募集。AO入試と同様、二年次以降に合格した学科に進級することが決まっている。
*3 総合理系:一般入試・前期日程、総合入試枠(理系)で受験し、入学した者の一年次の総称。入学後に、二年次以降の所属学部・学科などを決める。

学生生活の充実

堀口 理学部へ来てから1年半ぐらい経ちますが、今どんな感想を持っていますか?できれば楽しい話を聞かせてください。

佐々木 2年生の後半くらいから、やりたいことがはっきりしてきて、高分子機能学だけは自ら勉強するようになりました。最近、専門分野を学ぶことが楽しく、理学部に惹かれた意味が分かってきました。

有川 火山や気象の基礎知識など幅広く学んでいます。中学・高校から大学、専門科目に移行するまでの学習の中で、根本をちゃんと理解していなかったのだと気づくことが多くありました。あっという間に1年半たってしまったというのが率直な感想です。

浅野 今は、数学の基礎を学んでいる最中です。「あれ?この表現って、別の授業でも聞いたな」とか、「全く関係無いと思っていたけど、実はつながりがあって、同じ解に行き着くのか」という気付きがよくあります。数学は楽しい、というのが素直な感想です。

五藤 自分の好きな分野の実習が受けられ、生物に触れられることが楽しいです。行動学や系統地理学、多様性に興味があるので、細胞生物学などの細かい分野にあまり興味がありませんでした。でも、先生たちの研究の話を聞いてみたら、とても面白くて、興味がないと思っていた分野もどんどん学びたいという思いが強まった1年半でした。

長谷部 理学部には「これが好き」「これをやりたい」という信念を持っている人が多いと感じています。有機化学をひたすらやる人もいるし、アイヌや英文学、教育など学部を超えた関心を持ちながら自由に勉強をする人もいます。周りに多様な価値観を持った仲間がいることは、自分の成長のために素晴らしい環境だと思っています。

大野 1クラス30人くらいという少人数ですが、勉強だけではなく心の支えになってくれる友人が多くできました。物理学科に来てよかったと思っています。

堀口 普段はどのように生活していますか?

大野 つまらない答えかもしれませんが、バイトもサークル活動もせずに、勉強一筋です。最近は授業が増えてきたので、朝は図書館に行き、授業の時に理学部棟に来る、という生活をしています。

有川 二つのサークルに所属しています。「北大天文同好会」と「地球科学サークルGROUND」です。毎週、メンバーが持ち寄ったテーマをもとに勉強会を開きます。天文同好会では観測部長をしていて、月に1〜2回、晴れてなるべく新月に近い日を狙って星を観に行きます。晴れるかどうかは2~3日前にならないと分からないので、サークルの連絡網に「明日、観測に行きます!」と言って、集まったメンバーでレンタカーを借りて行きます。

堀口 星を観にどの辺りへ行くのですか?

有川 支笏湖や中山峠で星をきれいに観ることができます。あとは、周りに街灯が無いような、道路ぎわの待避所なども穴場です。冬には流星群を観に行きますが、道東しか晴れないことが多く、雪道をひたすら車で走って、-20℃の中で望遠鏡を組み立てる、なんてこともします。

浅野 僕は、授業を受けて、バイトに行って1日終わりみたいな感じで、3年目に突入しました。大学の授業はコマ数的に見れば2年生の頃はそれほど多くはなかったのですが、最近、増えてきました。たくさん出る課題を帰りのバスの中や、夜布団に入ってから「どうやって解くのだろう」と考えたりします。

実習で得られるものとは

堀口 みなさん、とてもポジティブに時間を過ごしているようで、嬉しく思います。実習はいかがでしょう。フィールドに出た時の感想を教えてください。

五藤 フィールド実習を心がけて多く履修しています。一番の思い出は厚岸の臨海実験所です。宿舎は町中から離れているので「歩いてコンビニには行けないよ」と言われていました。実際、宿舎は崖の真下にあって驚きました。そこで1週間、船に乗ったり、磯にいる生物を採取してその多様性を調べたりします。「解剖するもよし、写真を撮って色の違いを見てもよし、好きなように観察してください」と言われて、自由に活動できました。私は甲殻類の観察をしたかったので、ヤドカリを殻から出すなど試行錯誤を繰り返しましたが思うようにいかず苦労しました。

有川 最低限の知識はあらかじめ学んでから、ある地質の場所、地層が見られる地域に行きます。そして、この地層から何がわかるのかという事を研究して発表しなさいという、地質学実習を受けました。現地に行って自分の目で確認してみると、教科書やテキストで見たものとは違っていたりすることも多く、実際に見るからこそ読み取れるというか、よくわかることがあるんだなと思いました。

堀口 室内で行う実習はどうですか?

長谷部 化学は実験を中心とする学問なので、学生実験でも有機化学系、物理化学系、生物化学系と様々なジャンルの実験を行っています。扱うサンプルの種類や手法は多様ですが、実験手順・原理の意味や、よい結果を得るための工夫点を自分なりに考え、調べたり、友だちと議論したりすると、視野が広がっていく感じがします。今後、研究室に入るときに必要になるスキルを今から身につけているということなのかなと思っています。

佐々木 高分子は、物理と化学、生物との融合なので、顕微鏡を使った観察、有機化学の実験でより良い結果を求める実習、DNAを増やす実習、と何でもやります。実習には自由度が無くて、手順書通りに行って結果を出します。レポートを書きながら、手順書の意味を理解する楽しみはありますが……レポートを書くのは辛いです(笑)。

堀口 一番印象に残った実験を一つ挙げるとしたら、何ですか。

佐々木 細胞表面についている糖鎖を集める実験が楽しかったです。どんな発想からこの実験が生まれ、その先に繋がる研究の可能性を考えるところが面白かったです。

大野 私は高校の時に物理を取っていなかったので、大学に入って1年半しっかりと勉強してきました。それでも基礎知識が浅いと感じる部分があったので、実験の時は渡された資料をしっかりと読み込んでから取り組むように意識していました。

堀口 数学の浅野君の場合は、演習になるのですよね。いわゆる座学というよりは自分から積極的に何かやるという感じなのですか。

浅野 数学科の演習の授業は問題を渡されて、それを解けた人から黒板で発表して説明し、議論することを繰り返します。先生から突っ込まれた時に「それは違います」と僕たちが返すこともあります。問題を解くだけでは気づかないところや解けたけれど、もっと良い方法があると気づくこともあり、先生も入ってみんなで議論しながらできることは力になるし、とにかく楽しいです。

後編に続く

 

※本コンテンツは理学部広報誌「彩」第6号(2020年2月発行)に掲載された特集に加筆修正したものです。また、学年は広報誌掲載当時のものです。

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