博士号をとった上で、自分は何ができるかを考え続けてください

ライオン株式会社 研究開発本部 先進解析科学研究所 関根(松永)由可里さん

北大への憧れもあり進学を考えていた高校3年生の時、北大生が普段どのように生活しているのかを見るために、あえてオープンキャンパスには参加せず北大を訪れたことがありました。こんなに広々とした敷地に、新旧の建物が織り交ざる素敵な環境の中で学んでみたい。他大学も見学してきたけれど、やっぱり一番自分に合うのは北大!という気持ちが強まり、志望学部を薬学部に決め受験しました。

人の役に立てる仕事に就きたいという考えや、患者さんと関わる仕事に就きたいと考えていたこと、化学の実験が好きだったという理由から薬剤師を目指していました。ところが2年間の浪人生活を送ることになり、その間に「なぜ自分は薬学部志望だったのか?」「本当にやりたいことって何?」と考え始めました。その結果、「ヒトの生体機能を化学とつなげて、病気などで苦しんでいる人を助けられるのでは?」と考えが至り、現象の原理から学べる理学部化学科へ進路変更しました。

修士課程の短期留学中に多くのアカデミアで働く女性と話してから、修士取得後の進路を考えた時、就職活動をせずに博士課程へ進学するのも、ひたすら就職活動をするのも、嫌だと思いました。

そこで、企業は博士をどのように認識し、人材活用しようとしているのかを知るため、複数社の企業の人事担当者に博士人材について聞いてみることにしました。多くの話を聞く中で「博士号をとった上で、自分は何ができるかを考え続けてください」と博士号を持つ人事担当者に言われたことが最も心に響きました。「世界中の人たちが必要とする化学製品を届けたい」という思いを叶えるには博士号は必須とわかったのです。

博士課程でも多くのことを学び、就活の時期に「赤い糸会」という北大の人材育成本部が主催する企業との交流会に参加し、ライオン株式会社に出会いました。そこでライオンが大切にしている想いや使命に触れ、感銘を受けました。「自分はここに就職する!」と決心し、ライオンの研究人事担当者が来るイベントを狙って出席し、自分をアピールしました。また、視察に行ってそこで働く自分をイメージしたり、研究者として働く先輩を訪問し、疑問や不安に思っていることを質問して解消したりしました。そして採用試験を受け、内定を得ることができました。

入社後は、基盤研究を行う部所をいくつか渡り歩き、現在は先進解析科学研究所で製品開発を支える研究の仕事をしています。入社直後に携わった仕事は、実はこれまで経験したことのない化学の分野でした。新たな分野を学べる楽しさもありましたが、これまでの研究背景を踏まえ、自分のやりたい研究や手法を折を見て伝えていました。やりたいことを口に出し続けていると、何かの折に「そういえば」と自分のことを思い出してもらえることがあって、それがきっかけになり、自分のやりたい仕事につながっていきます。

これから大学を目指すみなさんや、いま研究をしているみなさんには、自分の興味のあること、好きなことを見つけてどんどんチャレンジしていってほしいと思います。臆せず手を出してみることで、世界は広がります。そして、仕事はつらいことが多いと思い込んでいる人も多いかと思いますが、好きなことをすることはできます。好きなことが仕事につながることを意識して、どんどん挑戦し、楽しみながら前に進んでください。

関根(松永)由可里さん
2011年 理学部化学科卒業/2016年 大学院総合化学院 博士課程修了。博士(理学)
現在 ライオン株式会社 研究開発本部 先進解析科学研究所

※本原稿は2019年9月19日に行われた「キャリアカフェ2019/学部の学びのソノサキ」での講演をまとめたものです。

※肩書、所属は発表当時のものです。

理学部広報誌「彩」第6号(2020年2月発行)掲載。>理学部 広報・刊行物

LATEST TOPICS