秩序を保ちながら弱い刺激で変化する結晶「ソフトクリスタル」を求めて

化学科 錯体化学研究室 加藤 昌子 教授

私たちの研究室では主要テーマとして「ソフトクリスタル」の研究を行っています。クリスタル(Crystal)とは結晶のことです。なぜ「ソフト」という柔らかいという意味の言葉がそえられたのでしょうか。水晶やダイヤモンドからイメージできるように結晶とは硬くて安定な物質という印象がありますが、最近その常識をくつがえすような興味深い結晶が相次いで発見されているからです。

つまり、ソフトクリスタルは、原子や分子が規則正しく並んだ結晶であるにもかかわらず、こすったり、蒸気にさらしたり、弱い刺激を与えることで、室温付近でも構造がガラッと変わるという特徴をもっています。さらに発光や色変化など、目に見える性質の変化がある物質をソフトクリスタルと定義しています。

物質には水やゲルのように流動性のある柔らかい物質から金属のように硬いものまであり、秩序性と構造を変化させるエネルギーとの間に相関性があります。硬いものほど、構造を変化させるためには大きなエネルギーが必要となるのです。

ソフトクリスタルは秩序性を保ちながらも、弱い刺激でも明瞭な変化を起こす物質です。

このような物質に着眼したきっかけは、発光性白金錯体を作っていた時の発見に始まりました。錯体とは金属と有機物の複合体のことです。あるとき、偶然のことでしたが、その白金錯体をしばらく放置していたら赤く光り出しました。不思議に思いその原因を追及しているうちに、蒸気を当てることにより発光がオン・オフできることが分かりました。このように、不思議な現象に出会うとその理由を知りたくなります。きれいな結晶に感動しながら、真理を解き明かしていくことこそソフトクリスタル研究の醍醐味です。

発光するソフトクリスタル

研究の詳細情報:
新学術領域研究 ソフトクリスタル (https://www.softcrystal.org/)

北海道大学 理学研究院 化学部門 錯体化学研究室

錯体化学研究室(前列中央:加藤昌子教授)

理学部広報誌「Sci」第3号(2018年7月発行)掲載。>理学部 広報・刊行物

※肩書、所属、学年は広報誌掲載当時のものです。

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