未来を切り拓く女性たち
女性が研究や技術開発に生きがいをもって打ち込める社会、女性であっても昇進や活躍の機会が奪われない社会、一人ひとりが自分のライフステージの移行とともに生活と研究のバランスを柔軟に選択できる社会、そんな社会を実現し、次世代を担う学生や子どもたちに見せていきたいと考えています。今回の特集では勉強や研究に励んでいる女性たちにスポットをあて、進路・研究を始めたきっかけや、趣味、将来の目標など、幅広く紹介します。
「緊張しますね……」とはにかみながらインタビューに応じてくれたのは超伝導を研究している大学院生の大内さんです。
北大理学部へ来たきっかけ
釧路工業高等専門学校では機械工学科を専攻していました。実習の多かった授業は楽しかったのですが,応用を学ぶほど「もっと根本的なところから理解したい!」と感じ,物理学に興味が湧き,思い切って工学部から理学部物理学科への編入を志しました。実は当時の数学担当の先生が北大理学部出身だったことも進路選択へ大きな影響を与えてくれました。
自然現象を明らかにしたい
北大理学部へは3年生から編入し,低温で電気抵抗が零になる「超伝導」という現象に興味を持ち,北孝文先生の研究室に入りました。
超伝導をはじめとする物理現象は様々な相互作用が複雑に絡み合うことで引き起こされますが,物事の核心を捉える物理学を道具とし,自然界の様々な現象を理解していくことが楽しいです。今後は,実験結果を再現・解明する研究に加え,逆に理論家の立場から面白い現象を自分の手で発見したいです。
日々の過ごし方
基本的には大学で研究をして家に帰るという生活サイクルの毎日です。時々アルバイトで朝早く家を出ることもあるので,規則正しい生活を心がけています。
アルバイトは非常勤講師として,高専の3年生に物理を教えています。教員への就職を視野に入れているので,講師経験は自分の糧になると考え,学生といつも真剣に向き合っています。しかし,物理に苦手意識を持つ学生は少なくないため,授業方針で迷うことも多々あります。一方で,専門分野を深く学びたいと考えている高専生にいち早く気づき,寄り添うことができるのは,高専出身の大内さんならではの気遣いです。
研究の喜びと苦しみ
計算がうまくいかず暗中模索の日々が続くと,不安と焦りが募りますが,計算ができたときの喜びはひとしおです。学会で他の研究者が興味を持ってくれたときはさらに喜びがこみ上げ「もっと研究頑張ろう!」という気持ちになります。また,修士2年生の春に初めて論文が日本物理学会誌に受理され掲載された時の嬉しさは格別で,その日は共同研究者の先輩と飲みに行ってお祝いをしました。お酒も一段と美味しく感じました。
気分転換
疲れた時は,散歩やカフェ巡り,BUMP OF CHICKENなど大好きな音楽を聴いて気分転換します。また,ずっと椅子に座って脳をフル活用するので,コーヒーと甘いもの,カレーは活力の源です。北大周辺はカレー屋さんがたくさんあるので,気づけば後輩とカレー屋さん巡りをしています。
将来の夢など
将来の夢は?との問いには「まだまだ迷走中ですが,物理か数学の教員や企業の研究職へ就きたいです。」と話していました。
もし,北大の物理に来なかったらどうしていましたか?という質問には「高専を卒業してそのまま希望していた自動車メーカーへ就職していたかもしれません。それはそれで楽しそうですね。」と答えてくれました。
基礎科学を目指すみなさんへ
理学は基礎学問なので,わかりやすい派手さはないかもしれませんし,研究で結果が出ないときはつらいかもしれません。しかし,学問の礎を築くことは科学の発展には必要不可欠で,その一端を担うことは重要な仕事です。また,研究していく上で身につけた知識や経験,技術,考え方は,基礎学問だからこそ汎用性もあり,必ず自分の力になると信じています。
理学部広報誌「彩」第4号(2019年2月発行)掲載。>理学部 広報・刊行物
※肩書,所属,学年は広報誌掲載当時のものです。