植物の力を利用して低炭素化社会を目指す

生物科学科(生物学)/環境分子生物学分野 森川正章教授,国立研究開発法人 産業技術総合研究所 北海道センター 牧野彩花さん

私たちは植物の光合成を最大限に利用して二酸化炭素を減らし,低炭素化社会を目指し,産業技術総合研究所・北海道センターや他の大学と共同研究を行っています。

具体的には,北大植物園の池に生息している「ウキクサ」という水草を利用して研究しています。これまでウキクサはアヒルの雑草と呼ばれて軽視されてきました。しかし,工場排水処理と組み合わせることで,大気中の二酸化炭素を取り込みつつ水を浄化するシステム化に成功しました。さらに工場排水を養分にして増えるうえに,でんぷんを多く含みタンパク質蓄積能力も優れていることから,バイオ燃料の原料や良質な家畜の飼料にもなりそうです。

特に現在注目しているのが「共生微生物」です。ウキクサの表面に住む約百万個の微生物の中に成長を促すホルモンを分泌する有益な微生物を世界で初めて発見しました。共同研究先の産業技術総合研究所の牧野さんにはその有益な微生物のコレクションを行ってもらっています。将来,ウキクサや排水の種類に応じて微生物を使い分けるための大事なコレクションとなっていくでしょう。

この研究は2030年の社会実装を目指した国のプロジェクト(先端的低炭素化技術開発・ALCA)のひとつとして行っています。すでに実現への道のりが見えはじめていますが,さらに広く社会にどう役立てていくのかを考えて研究を進めていきます。

緑色の部分がウキクサの根に住んでいる有益な微生物

理学部広報誌「Sci」第2号(2018年1月発行)掲載。>理学部 広報・刊行物

※肩書,所属,学年は発表当時のものです。

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