ペプチド高分子の働きを解明して疾患を予防

生物科学科(高分子機能学)自然免疫研究室 綾部時芳教授

小腸は食べたものが消化吸収される大事な場所です。栄養が効率よく吸収できるように絨毛という突起がたくさんあり,すべての絨毛を平らにするとテニスコート2面分もの面積になります。それだけ広いと栄養分はもちろんですが,病原菌も入り込みやすくなります。病原菌から体を守る仕組みを免疫といい,私たちは「パネト細胞」という体を守る仕組みを持つ小腸上皮細胞の機能を世界で初めて発見しました。パネト細胞の構造と機能を調べていると,パネト細胞から算出される「αディフェンシン」という抗菌ペプチドが自然免疫のはたらきで病原菌などから私たちの体を守っていることがわかりました。

また,クローン病や潰瘍性大腸炎などの免疫性疾患,肥満や糖尿病,メタボリック症候群などの生活習慣病へのかかりやすさなどもαディフェンシンのはたらきが鍵を握っていると考えられます。

小腸は食べ物が来たら消化・吸収し,病原菌が来たら退治する免疫が同時に働いている大事な場所です。人間の健康をつかさどる小腸を研究し,食と健康を腸から科学しています。

パネト細胞や抗菌ペプチドの研究を通して腸の免疫性疾患の克服や予防を目指しています。私たちは自ら治療を行っているわけではありませんが,病気の原因を研究している北大病院との共同研究や産学連携企業と協働して社会への実装を目指しています。

北大理学部高分子機能学の研究として知を創生して世の中に出し,人の役に立つのが私たちの大命題です。今後も健康を科学的に理解し,研究による新しい発見や成果を通じた社会貢献を達成したいと考えています。

緑色に光っている部分がパネト細胞

理学部広報誌「Sci」第1号(2017年8月発行)掲載。>理学部 広報・刊行物

※肩書,所属,学年は発表当時のものです。

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