生命現象を解き明かす数学理論

数学科/数理科学系 栄 伸一郎 教授

諸科学や社会現象の真理や原理の根底には,数学的構図があります。数学には時として「世界を変える力」が秘められています。

おそらく皆さんが思っている以上に,数学を用いてできることは沢山あります。基本原理が明確な物理現象のみならず,ミクロな構成要素間の相互作用がマクロな構造を創り出す自己組織化現象をも数学理論を用いて研究することができます。

究極の自己組織化現象は生命に関わる事象です。例えば形態形成,即時適用,機能分化などがそれにあたります。ここで紹介するように,こうした生命現象に関する研究も数学科で行われており,そこから逆に新たな数学理論が創られていきます。

実際,生命現象を数式(数理モデル)で表現し計算機でシミュレーションすることにより,思いもよらない活動を予測できることがあります。近年の遺伝子操作技術の発展により,遺伝情報を反映する生命内部のパラメータと,対応する数理モデルに現われるパラメータを,相補的に微調整することが可能となりつつあり,生命の特徴的な形態をピンポイントで再現する技術につながると期待されています。

多くの皆さんにいろいろな数学に触れてもらい「数学は,こんなところにも使われているんだ」「こういうふうに活用できるんだ」と発見をして,物事を探究する喜びを一緒に味わってほしいと思っています。

理学部広報誌「Sci」第1号(2017年8月発行)掲載。>理学部 広報・刊行物

※肩書,所属,学年は発表当時のものです。

LATEST TOPICS