日本は火山大国であり、火山研究が盛んに進められています。しかし火山の中を直接見ることはできません。今回は、火山の噴出物から噴火の謎に迫っている無盡真弓助教に話を聞きました。
火山研究との出会い
東北大学3年生の時に、実習で北海道・樽前山に登りました。山頂に形成された巨大な溶岩ドームに圧倒され「なぜこんなものができたのだろう」と興奮したのが火山研究への原点でした。実習中、手にした軽石や岩石が同じ火山でも顔つきが異なるものがあることに気づき、引率の教員に尋ねてみると、人によって答えは様々。現在の科学でも明確に説明できないことがこんなにもあるのかと驚くと同時に「いつか自分がその謎を解く側に立ちたい」と思ったのです。

2011年、学部4年生で実験岩石学の研究室に所属。ちょうどその年に鹿児島と宮崎にまたがる新燃岳が噴火しました。この噴火では、サブプリニー式噴火、火口に溶岩をためる噴火、ブルカノ式噴火と様々な噴火様式(後述)が見られました。活火山の噴出物を直接調べられるまたとないチャンスであり、そこで私は新燃岳について調べることにしました。
世界初! 噴火様式の違いを記録するナノライトの発見

新燃岳の噴出物にマイクロメートルサイズの結晶「マイクロライト」よりも小さい、ナノメートルサイズの微小結晶「ナノライト」が存在することを見出しました。これまでガラスだと考えられていた部分に、数十ナノメートルの結晶がびっしり晶出している噴出物もありました。ここまで鮮明な顕微鏡写真を撮ったのは私たちが世界初だと思います。さらに、マイクロライトでは噴火様式で違いがみられなかったのですが、ナノライトの有無やその鉱物種、形が噴火様式で異なることを発見しました。
噴火様式とは「噴火のしかた」のことで、簡単には爆発性の違いを意味します。マグマが粉々になって軽石や火山灰が噴出する爆発的な噴火や、マグマが粉々にならずに山頂に溶岩ドームを形成したり、さらさらと溶岩が流れる非爆発的な噴火があります。実は新燃岳のように、同じ火山、同じ化学組成のマグマ、それが同じマグマだまりから出たとしても、異なる噴火様式で噴火し、さらに噴火様式が変化していくことがあるのですが、その噴火のしくみはまだよくわかっていません。噴火様式はいつ、どのように決まるのでしょうか。マグマだまりで決まっているのか、それとも地表へ上昇する過程で決まるのか。私は、ナノライトの晶出条件やナノライトを含む噴出物の粘性などを調べることで、噴火のしくみの解明につながると考えています。
「フィールド× 実験」で迫る火山の真相
実際に火山に出向いて噴出物を採取し、実験室で詳細に観察したり、高温や高圧を発生させて、噴出物の形成条件を調べる実験をしたりしています。電子顕微鏡の解像度向上により、数十ナノメートルという極めて小さな結晶を比較的容易にとらえることができるようになりました。電子顕微鏡内で試料を約1000℃まで加熱し、結晶が成長する過程を観察することもあります。最近は、こうした観察や実験を通じて、マグマ内部で結晶がどのように生まれ、成長していくのかを探っています。
結晶成長に関しては、「古典的核形成」という確立された理論がありますが、近年はそれとは異なる結晶成長経路が次々と発表されています。結晶がどのような条件で、どのように晶出し、マグマの粘性をどう変化させ、ひいては噴火の様式にどのような影響を与えるのかを明らかにしたいです。現在は、溶液中の結晶成長研究のスペシャリストである低温科学研究所の木村勇気教授とも協力し、ミクロからマクロへとつながる火山現象の解明に挑んでいます。

もっと知りたい
2025年4月に北海道大学に着任しました。火山の多いこの地ならではの研究環境を活かして、今後は道内の火山にも注目していきたいです。火山噴出物には未解明な点が多く、研究の可能性は非常に大きい分野です。北海道から火山研究を盛り上げ、共に探究する仲間も増やしていきたいです。今は火山噴出物の研究に夢中ですが、魅力的なテーマに出会えば、新たな挑戦もしてみたい。「地球をもっともっと知りたい」という思いが私の原動力です。
母として、研究者として
5歳の息子の幼稚園送迎は夫と分担しています。夫の協力がなければ今の研究生活は成り立たないと感じています。企業で働く友人の話を聞くと、女性研究者が大学でライフイベントと仕事を両立して続けることの難しさを実感します。授業は代わりがきかず、研究も待ってはくれません。制度の整備は進みつつありますが、置かれた状況や優先順位、理想とする子育ての形は人それぞれ。何が正解かは言えないのが難しいところだと思います。
ワクワクを原動力に
研究に限らず「ワクワクする気持ちを忘れないこと」を大切にしています。おもしろいことがあった時に純粋に「おもしろい」と感じられる心を常に持ち続けたい。自分の興味を軸に、研究も人生も楽しみたいと思っています。
本研究に関する解説 :『火山』 第 67 巻 (2022)第3号389 – 399頁
https://doi.org/10.18940/kazan.67.3_389
無盡 真弓 助教
東京都出身。平成元年生まれ。2025年4 月に北大着任。想像以上に北海道の夏が暑くて驚いた。学生時代に全国の火山学学生が集う「火山学勉強会」を発足。2021 年度日本火山学会研究奨励賞受賞。座右の書は「結晶 ~成長・形・完全性~」(砂川一郎著、共立出版株式会社)。休日は5 歳の息子と公園巡りを楽しんでいる。

理学部広報誌「彩」第13号(2026年2月発行)掲載。>理学部 広報・刊行物
※肩書、所属は、広報誌発行当時のものです。