チューバ吹きです

小林 正人 准教授(化学科/量子化学研究室)

#metime(ハッシュタグ ミータイム)〜研究者の自分時間〜

研究者って研究ばかりしているのでしょうか。北海道大学理学部各学科の研究者に、自分らしく過ごしている時間や、これまで力を注いできたことについて話を聞きました。「趣味」という言葉では表せないほど、どの研究者もそれぞれに真剣に向き合っており、本気度が見えてきます。理学部の魅力的で多様なmetimeをお楽しみ下さい。

※ Me time:time devoted to doing what one wants, typically on one’s own, as opposed to working or doing things for others, considered as important in reducing stress or restoring energy. 他の人のためではなく、自分がやりたいこと、自分自身で行うことに充てられる時間。ストレスを軽減したりエネルギーを回復したりするのに重要であると考えられている。(オックスフォード英語辞典より)

小林 正人 准教授(化学科/量子化学研究室)
1980年、東京都出身。大規模計算の手法開発や、スーパーコンピューターを駆使した化学現象の解明を行っている。北大に赴任して10年。冷涼な気候と子育てしやすい環境が気に入っている。家では料理担当。

楽器との出会いは?

5歳でエレクトーン、小学4年で金管楽器に出会いました。最初はアルトホルン、5年からはユーフォニウムを担当しました。中学以降はチューバを吹いています。早稲田実業高校吹奏楽部では、夏の甲子園でスーザフォンを吹きました。得点のたびに動きながら演奏するなど、忙しくも楽しい思い出として残っています。その後、早稲田大学フィルハーモニー管絃楽団(早稲フィル)に所属しました。

チューバの魅力は?

低音を担う重要な楽器ですが、人数は少なく、実は演奏の出番も少ないです(笑)。しかし隣のトロンボーンと一緒に作り出す和音に魅力があります。楽譜通りの音を出しても、和音になるとどうしてもうねりが出てしまいます。そこで例えば同じ「ド」でもわずかに低く出したり高く出したりお互いに調整します。ピタッときれいな和音が出たときは気持ちいいものです。演奏中は感覚的にしていますが、完全に物理の話ですよね。他のオーケストラの演奏を見ても、やはりチューバやトロンボーンを見ますし、そこの音だけ抜き出して聞けますよ。

作曲や編曲もするのですか?

小学生の頃から作曲を続けていたこともあり、高校2年で吹奏楽用の曲を作り、全パートのスコアを書きました。定期演奏会で演奏したり、僕の曲を音大生が演奏し録音してくれたりして、嬉しかったです。高校3年の時は、ブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」を、吹奏楽用に編曲しました。懐かしいですね。

高校2年の時に作曲した「春の草原」のスコア
もう音楽家ですね!

将来、音楽を専門にしようと考えたことも少しはあったのですが、やはり音楽は趣味として楽しむ方がいいと思って今に至っています。
早稲フィルを卒団後、卒団生中心のオーケストラ「フィルハーモニア・ブルレスケ」を新たに結成し、北海道に赴任するまで10年ほど団長を務めていました。今年で結成20年で、ずっと応援しています。
今はインターネットでプロの演奏を聴けるのが幸せですね。研究中も、作業によっては音楽を聴きながらの方がはかどることもあります。最近は、マーラーの「悲劇的」(交響曲第6番イ短調)がお気に入りです。私の場合は、迫力ある曲の方が研究や作業が進むんですよね。

今後の音楽活動については?

北海道に来てからは演奏をしていません。実は北大着任が雪の残る3月で、3日間で3回も転んでしまい、これは大きなチューバを背負って転ぶわけにはいかないと、今は封印しています。
家族とは、テレビ等でコンサートや音楽番組を一緒に見たり、子供向けの演奏会に行ったりもしていますが、二人の子どもたちは音楽よりも野球に興味があるようです。もう少し成長したら、本格的なコンサートにも一緒に行きたいですね。音楽はもう私の一部になっています。いずれはまた演奏もしたいです。

人生を豊かにするには?

音楽は好きで続けてきましたが、他にも好きなことは多くあります。一つに縛られずに、興味あるものには全部目を向けてみてください。研究も然りです。一つの分野ばかりにのめり込むと、偏った研究しかできなくなってしまいます。視野を広く持つと、人生がより豊かになるはずです。

理学部広報誌「彩」第10号(2024年8月発行)掲載。>理学部 広報・刊行物

※肩書、所属は、広報誌発行当時のものです。

LATEST TOPICS