大学で学んだ地球物理の観点から自然と向き合う

齊藤一真さん(札幌管区気象台 気象防災部 地域火山監視・警報センター)

「雲を眺めるのが好き」というシンプルな理由で、高校時代は気象大学校への進学を希望していました。結局合格はできなかったのですが、現在、気象庁で気象大学校の卒業生と共に働いていると思うと感慨深いです。北大理学部へは「地球や自然への興味」と「食べ物が美味しそう」という理由で受験し、進学しました。

学部時代は冬山で登山とスキーを楽しむ「山スキー部」に所属していました。時間をかけて冬山に登り、快晴の中、真っ白な斜面をスキーで滑り降りる気持ち良さは筆舌に尽くし難いです。4年間で約50の登山計画に参加し、北海道の主要な山を概ね登りました。一週間を超える長期登山を行っていたことを振り返ると、贅沢な時間を使っていたと思います。まさに学生の特権です。

学部3年時の研究室選択は、フィールドワークのある地震火山研究観測センターを希望しました。研究室では、多くの観測に参加しました。十勝岳での重力観測、三宅島でのG N S S 観測(Global Navigation Satellite System /全球測位衛星システム)、鹿児島での人工地震探査、渡島大島での地震計の保守整備、胆振地域での電磁気構造探査など、どれも貴重な経験でした。

研究では、高橋浩晃先生のご指導の下、誘発地震(ある地震が別の地震を引き起こす現象)の研究に取り組みました。具体的には2016年熊本地震の際に隣の大分県で発生した誘発地震に対して、地震の揺れが震源に与えた影響を地震計の記録から推定しました。先生のご指導のおかげで、鹿児島や中国四川省での地震学会や、カムチャッカでの火山勉強会などで発表することができ、自分の研究を他の人に伝える楽しさと難しさを学ぶことができました。

大学卒業後は気象庁に就職しました。地球をフィールド対象として、物理探査の観点から自然現象と向き合うことができると考えたからです。現在は、火山の活動を監視する部門で働いており、火山に設置された観測機器の保守や現地調査を行うため、出張の多い日々を送っています。体力に自信のある人は、大歓迎される部門です。

大学時代の研究分野と、就職後の業務分野は共通点が多いです。それでも自分の知識不足を日々痛感します。しかし、学生時代に様々な経験を通して得られた知識の断片が、いま少しずつ結びつき、理解が深まっているため、仕事がとてもおもしろいです。学生時代に得られた経験はその後も生きてくるので、みなさんにも頑張って欲しいです。

齊藤一真さん
2017年 理学部地球惑星科学科卒業/2019年 大学院理学院自然史科学専攻修士課程修了。現在、札幌管区気象台 気象防災部 地域火山監視・警報センターに勤務。出身は福井市


理学部広報誌「彩」第9号(2023年2月発行)掲載。>理学部 広報・刊行物

※肩書、所属は広報誌発行当時のものです。

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