新しい日常をつくる~ 学生の学びを守る理学の挑戦 ~
誰もが経験したことのないコロナ禍で、大学への入構規制も行われ、これまでの教育体系の変更を迫られた2 年間。学びの機会を確保するために、どのような取り組みを行い、またアフターコロナに向けてどのような新しい日常を作っていくのか。学びを止めない理学部各学科の挑戦を紹介します。
生物科学科(生物学)とは
生物学は生き物そのものを対象とし、分子構造や細胞生物学といったミクロから、個体群集や生態学といったマクロまですべて一貫して学びます。扱う材料は様々で、例えば動物を扱う実習ではウズラの受精卵を発生させ観察したり、植物を扱う実習ではシャーレ中で種をまき育てたものを観察します。また、苫小牧演習林や札幌キャンパスで昆虫や植物を調べたり、海洋生物の調査を行う臨海実習など、野外実習があるのも特徴です。
コロナ禍での対応
制限レベルに従いながら、授業はオンラインやオンデマンドを併用しつつ、実習に関してはできる限り対面で実施する対策をとっています。実習内容を事前にオンデマンド視聴することで実験室の滞在時間を短くしたり、人数制限と座席指定をしたりしています。観察に使う顕微鏡は一人一台準備しています。
一方、コロナ禍でオンライン授業に慣れてしまい、大学の対面授業や実習に出るのが難しいという学生もいます。その場合は休憩時間を特別に取るなど、個別に対応しています。これまで以上に学生の様子をよく見て、必要に応じて声かけなどしています。
生き物は直接見て触れるのが大切
コロナ時代を経て、生き物を扱う私たちの学問に対して、自動化・機械化の導入について問われることもありますが、やはり生き物は直接見て触れるのが大切です。顕微鏡の観察像は動画で見れば済むじゃないか、と思うかもしれませんが、完成した物を動画で見るのと、自分で苦労して探して観察するという過程が入るのとでは全く違います。さらに、例えば海藻類のネロネロや、生き物の匂いなど、五感を使って生物に向き合ってほしいです。また、受精卵は割れないように死なせないように大事に扱うなど、精神的な面でも体験することは重要です。
コロナ禍で難しい状況の時もありますが、そのような経験をしてもらうために私たちは努力を惜しみません。肝心な「生」を扱う作業はオンラインでは鍛えられません。
オンラインで歓迎会を
コロナ禍の学年は、それ以前と比べて学生同士の連携が希薄になっているように思います。授業や実習時に顔をあわせてコミュニケーションをとる機会が少なくなってしまった結果かもしれません。そこで生物学では、毎年恒例だった2年生の歓迎会をオンラインで行い、3年生にも参加してもらって、先輩と後輩が交流を深められる時間を作りました。オンラインにしたことで、留学生が海外から参加することもできました。やはり仲間作りはとても大切と考えています。
命の素晴らしさを学んでほしい
生物学の教員はとにかく生き物が大好きです。だからこそ、生物を学びたい学生を理解し共感できますので、相談にも乗りやすいと思います。生き物について幅広く学ぶことができ、どんな状況でも熱心に指導する教員がそろっています。ぜひ共に命の素晴らしさを学んでほしいと思います。生物学の分野は未知なることがたくさんあり、それを解き明かしていく作業は私たち自身を知ることにもつながります。
理学部広報誌「彩」第7号(2022年2月発行)掲載。>理学部 広報・刊行物
※肩書、所属は、広報誌発行当時のものです。