フィールド魅力は自然の偉大さを実感できること
~GPSを利用した地殻変動の観測

理学研究院附属地震火山研究観測センター 大園 真子さん(講師)

未来を切り拓く女性たち
女性が研究や技術開発に生きがいをもって打ち込める社会、女性であっても昇進や活躍の機会が奪われない社会、一人ひとりが自分のライフステージの移行とともに生活と研究のバランスを柔軟に選択できる社会、そんな社会を実現し、次世代を担う学生や子どもたちに見せていきたいと考えています。今回の特集では勉強や研究に励んでいる女性たちにスポットをあて、進路・研究を始めたきっかけや、趣味、将来の目標など、幅広く紹介します。

大園さんは,地震観測研究分野でGPSを利用して地面の動きを測る測地学が専門です。一年のうち半分近くはフィールドでの観測活動を行っています。

平成30年北海道胆振東部地震

2018年9月6日未明に起きた北海道胆振東部地震は道民の記憶に新しいところです。この時,大園さんは観測用の機材を設置するために,当日のうちに震源域に近い地域に入りました。被災地を見てショックを受けましたが,地震の直後ではないと得られないデータがあるため「自分は観測のために来た」と気持ちを奮い立たせました。観測により地面の動きがわかると,何が起こったかの理解ができます。理解ができると,今後の予測につながり,最終的には減災や社会への貢献となります。

きっかけは理科の先生との出会い

中学の頃から理科が好きでした。当時の理科の先生がとても面白い授業をしていたのです。「この先生はとにかくすごい」と尊敬し,自分もそんな大人になりたいと思い始めます。高校では物理を学びました。大学に進学してから地球物理学に出会い,「物理のツールを使って地球のことを知ることができるんだ!」と知り,測地学に進む決心をしました。「地殻変動を知りたい」と研究を進め,卒業研究からGPSを使い始めて今に至ります。

フィールドに行けること。それが楽しい。

フィールドに出ることに喜びを感じています。それが研究結果として認められた時は本当に嬉しく,研究者冥利に尽きるというものなのでしょう。反対に,フィールドに出て調査したけれど結果がうまく出なかった時や,地震が起きた時に調査のためとはいえ被災地に入り,とてもつらい経験もします。しかし,その積み重ねがサイエンス分野,社会への貢献とつながっていくので,すべてのことに真摯に向き合い研究・調査を進めようと心に決めています。

結婚生活

同じ分野の教員をしているご主人と結婚して十年。ところが互いの職場が異なり,単身生活のためなかなか会うことができません。「今度の学会に来る?」「〇〇の調査に行くよ!」などの会話を大切にしています。学会やフィールド調査で一緒になることもあります。でも,一緒に暮らしながら研究ができる日が来たらいいのに……と思っています。

目標はGEONET制覇

趣味は「GEONET巡り」で,気分転換のドライブやフィールド調査時に北海道内180か所ほどある電子基準点を完全制覇しました。今は日本国内の電子基準点制覇を目指しています。電子基準点に行くと,その基準点の現況も見られるので趣味と実益を兼ねているのです。また,研究室にはマトリョーシカがたくさん飾ってあります。ロシアへ観測等で行くたびに一個ずつ買い足していて,その数は大小11個。今後もどんどんと増えていく予定です。

オフの過ごし方は,短い時間しか取れないときは寝てリフレッシュし,時間があるときは料理をします。スーパーに並んでいる食材から季節の変化を感じ,秋にサンマが並ぶと,サンマさばきにはまり,新鮮な刺身メニューや,創作サンマ料理に夢中になります。

先読みしては前には進めません

やりたいことは,とりあえずやってみてください。興味を深めてその世界に入ることもできます。サイエンスの世界とは言わず,何でも挑戦できます。先読みをしてしまうと前には進めません。私も振り返れば何度か挫折をしましたが,それも糧となって今があります。何事も意外と何とかなりますよ!

 

理学部広報誌「彩」第4号(2019年2月発行)掲載。>理学部 広報・刊行物

※肩書,所属,学年は広報誌掲載当時のものです。

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