命がけで遊び真面目に研究

野々山 貴行 准教授(生物科学科/高分子機能学/ ソフト&ウェットマター研究室)

#metime(ハッシュタグ ミータイム)〜研究者の自分時間〜

研究者って研究ばかりしているのでしょうか。北海道大学理学部各学科の研究者に、自分らしく過ごしている時間や、これまで力を注いできたことについて話を聞きました。「趣味」という言葉では表せないほど、どの研究者もそれぞれに真剣に向き合っており、本気度が見えてきます。理学部の魅力的で多様なmetimeをお楽しみ下さい。

※ Me time:time devoted to doing what one wants, typically on one’s own, as opposed to working or doing things for others, considered as important in reducing stress or restoring energy. 他の人のためではなく、自分がやりたいこと、自分自身で行うことに充てられる時間。ストレスを軽減したりエネルギーを回復したりするのに重要であると考えられている。(オックスフォード英語辞典より)

野々山 貴行 准教授(生物科学科/高分子機能学/ ソフト&ウェットマター研究室)
 1985年、愛知県出身。北海道に来て10年、すっかり大自然の虜になり永住も考えている。行きつけは札幌国際スキー場やニセコアンヌプリ。生体高分子(ゲル)と無機物(骨や貝など)をつなぐ複合領域を研究している。

ウィンタースポーツが好き?

スキーとスノーボードが大好きです。学生時代にスノボのインストラクターの資格を取りました。当時は年間50日は滑りに行っていましたね。カービングを究めて、実に真面目に滑るボーダーです。
北海道に来て、世界に誇るパウダースノーに感激しました。バックカントリーや雪山登山を楽しんでいます。大雪山系の旭岳には、ビーコンやパラシュート、食料 などかなりの重装備で登りました。一緒に行く遊び仲間は、大学関係者もいれば、それ以外の人もいます。仲間と滑るのは楽しいですね。

お気に入りのブランドは?

ボードはVölkl 、自分で輸入しました。Bartonや国産のOGASAKAも好きです。そろそろ次の板を考えていて、北海道のブランドGENTEMSTICKも候補の一つです。スキーはSalomonやBlack DiamondやArmadaなどを持っています。新雪パウダー用の結構太い板です。

研究のことを考えながら滑ることも ありますか?

研究している材料が遊びの道具に使えたらいいなと……。特に雪上のカービングでは、ターンに入る瞬間とエッジを立て続けている時とで板の硬さが変わるのが理想です。でも簡単なことではありません。最近、温めると硬くなる新しいゲルを開発したので、理論上は熱ではなく圧力で硬さが変わる材料も可能だと考えています。それがこのスキーやスノボの板に使えたらいいなと思っています。

スポーツが仕事に役立ったことは?

国内外問わず、同業の研究者が北大に来た時に、希望があれば一緒に滑りに行きます。業界の権威と言われるような研究者とも、一緒に滑ると立場は関係なくなります。スポーツは人間関係をつくるツールとして非常によいです。

登山や冒険も趣味の一つとか?
黒部峡谷の断崖絶壁

知床岬にはカヌーで行き、トレッキングしたり、ほぼ垂直の崖を100m登ったり、海を泳いで進んだりしました。ヒグマに遭遇したこともあります。
最近は、黒部峡谷の断崖絶壁「水平歩道」に行きました。「黒部で怪我はしない」と言われていて、これはもし落ちたら怪我では済まされないという意味なのですが、何とか生還できました。日本には多くの素晴らしい山があります。これからも命がけでいろいろ楽しみたいです。

冒険の魅力は?

本気になれる点です。ちょっと間違えば命はありません。極限状態に身を置くことでしか見られない感動の景色を求めているのかもしれません。
実は研究にも共通しています。新しい材料を造った時は、自分だけが特等席で見ているワクワク感がありますね。僕にとって趣味は息抜きというよりは、命がけで遊んで真面目に研究するところまでが一続きでしょうか。

大切にしてほしいことは?

今までに何度か骨折しました。その経験から骨がどうしてできるのか、なぜ脆いのかなど、材料としての骨に興味をもちました。無茶も多くしてきましたが、様々な経験から人の興味は生まれます。そのとき考えたことや感じたことを大切にしてください。

 

理学部広報誌「彩」第10号(2024年2月発行)掲載。>理学部 広報・刊行物

※肩書、所属は、広報誌発行当時のものです。

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