とにかく集めて調べたい!

仲田崇志 講師(生物科学科/生物学/多様性生物学講座II)

#metime(ハッシュタグ ミータイム)〜研究者の自分時間〜

研究者って研究ばかりしているのでしょうか。北海道大学理学部各学科の研究者に、自分らしく過ごしている時間や、これまで力を注いできたことについて話を聞きました。「趣味」という言葉では表せないほど、どの研究者もそれぞれに真剣に向き合っており、本気度が見えてきます。理学部の魅力的で多様なmetimeをお楽しみ下さい。

※ Me time:time devoted to doing what one wants, typically on one’s own, as opposed to working or doing things for others, considered as important in reducing stress or restoring energy. 他の人のためではなく、自分がやりたいこと、自分自身で行うことに充てられる時間。ストレスを軽減したりエネルギーを回復したりするのに重要であると考えられている。(オックスフォード英語辞典より)

仲田崇志 講師(生物科学科/生物学/多様性生物学講座II)
1980年、横浜市出身。とにかく何でも収集したくなる。カプセルトイの機械やフィギュアも多数所蔵。マンガもアニメ鑑賞も好き。専門の微細藻類の豆本を手作りして訪問してきた学生さんに贈ることもある。

微細藻類の研究者になった経緯は?

図鑑が好きで、子どもの頃から、新種の発見、命名、分類という夢を追い続けています。大学時代の恩師、野崎久義先生との出会いで、微細藻類(植物プランクトン)の専門に進み、最近はクラミドモナスを研究しています。分類学が専門なので「国際藻類・菌類・植物命名規約」の翻訳メンバーも務めています。

収集に凝っているそうですね

とにかく収集好きで、中でも書籍は、自宅にどれくらいかなぁ、気になった本は手当たり次第買ってしまうので、様々なジャンルを合わせて一万冊ぐらいあります。最近重点的に収集しているのは辞書です。広辞苑は初版から第七版まで全て持っていますよ。
これも分類学の研究と関係していて、この植物は一体いつからこの名前で呼ばれているのだろうと気になれば、古い時代の辞書や歴史書などで調べます。江戸時代の漢字辞書「永代節用無尽蔵えいたいせつようむじんぞう」もネットオークションで一万円で入手し、愛読しています。みなさんの想像より安いのでは。もちろん本物です。

古い本から何が分かりますか?

例えば海藻の名前を調べると、草木の項目に「ところてんぐさ」と書いてあります。寒天の原料、テングサですね。ここから、江戸時代にテングサが「ところてんぐさ」と呼ばれ、当時の人には身近な海藻だったことがうかがえます。
さらに名前そのものの変遷も追いかけたくなり、年代の違う本や、京都と江戸の違いなど、集めたい書籍も広がっていきます。収集はもう止められません。藻類一つでも、これだけの情報を遡れることに感動しますし、当時の人たちの知恵、探究心、書物として残そうというパワーに思いを馳せるのも醍醐味です。

自慢の一冊はどれですか?

和爾雅わじが」という本です。蔵書の中で最も古く、江戸時代の元禄七年(1694 年)に発行された百科事典のような本です。本草学者として有名な貝原益軒の養子(甥)、貝原好古がまとめたものです。藻類も15種類ほど載っています。

趣味が研究で、研究が趣味ですね

趣味を研究と言えたらいいなと思っています。奈良時代から現代に至るまで、国語辞典や百科事典等で扱われてきた藻類の名前の変遷を調べて、当時の人々や社会にどう捉えられていたのかなどをまとめるのが、今の目標です。点と点が結ばれて新しい発見をした時は最高に気分がいいです。
もちろんフィールドに出てサンプルを採取して、現生の藻類も調べています。遺伝子解析をし、名前や形態を調べて分類します。新種かもと思うとワクワクしますね。僕が見つけた新種を「ハパロクロリス・ノザキイ」と命名し、恩師の野崎先生の還暦祝いに献名したこともあります。

とても幸せそうにみえます

とにかく今を生きています。未来のことを考えるより、今が幸せだと思う生き方を続けたいです。みなさんには、自分が興味を持ったことを最後まで調べきることをお薦めします。やりきることはなかなかできませんが、その先により面白く新しい発見があると信じています。

 

理学部広報誌「彩」第10号(2024年2月発行)掲載。>理学部 広報・刊行物

※肩書、所属は、広報誌発行当時のものです。

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