化石、化石、化石……

山田 敏弘 教授(地球惑星科学科/地球惑星システム科学講座)

#metime(ハッシュタグ ミータイム)〜研究者の自分時間〜

研究者って研究ばかりしているのでしょうか。北海道大学理学部各学科の研究者に、自分らしく過ごしている時間や、これまで力を注いできたことについて話を聞きました。「趣味」という言葉では表せないほど、どの研究者もそれぞれに真剣に向き合っており、本気度が見えてきます。理学部の魅力的で多様なmetimeをお楽しみ下さい。

※ Me time:time devoted to doing what one wants, typically on one’s own, as opposed to working or doing things for others, considered as important in reducing stress or restoring energy. 他の人のためではなく、自分がやりたいこと、自分自身で行うことに充てられる時間。ストレスを軽減したりエネルギーを回復したりするのに重要であると考えられている。(オックスフォード英語辞典より)

山田 敏弘 教授(地球惑星科学科/地球惑星システム科学講座)
1975年、愛知県出身。2023年4月北大着任。北海道は化石採集のフィールドが近くて嬉しい。手にしているのはお気に入りの異常巻きアンモナイト。札幌の大通駅周辺の壁に多数のアンモナイトを見つけた時はしばらく見入ってしまった。

化石が好きだそうですね

僕の人生は5歳からずっと化石一色です。化石で有名な岐阜県瑞浪市に両親が連れて行ってくれたのがきっかけで、初めて拾った化石はゲンロクソデガイ。殻がとても薄くてバラバラに割れてしまいましたが、どうしてもきれいな形で採りたくて、その後何度も挑戦しました。試行錯誤の末、 10 年かけてやっと成功したときのことは、今でも忘れられません。中学からは地元の化石愛好会に参加して、いろいろなところに行きました。

自然と化石研究の道へ進みましたね

ずっと貝の化石の研究をしたいと思っていました。ところが大学で地学分野に進学したら、先輩がみんな貝の研究をしていて、それなら誰もやっていないことをしようと、植物化石の道を選びました。当時、化石側から植物を見る研究者がおらず、大学院からは、現生の植物を対象に6年間発生学を研究しました。おかげで植物切片を見る目が養われ、その後植物化石の理解度がとても上がりました。

今の研究内容を教えてください

植物化石には細胞の構造が残っていることが多いので、そこから形の進化を調べています。植物が陸上に進出して一気に増えた約 4.2 億年前や、白亜紀初期(1億数千万年前)の、現生に近い裸子植物や花の咲く植物が出てきた時代に注目しています。恐竜も食べていたでしょうね。新生代の気候変動と植物の変遷にも興味があります。

化石が入った石を割る。 この日はまつぼっくりの化石がたくさん採れた。
頭の中はいつも化石ですか?

一日中、化石や植物のことを考えています。寝る前に、布団に入ってから石を眺めることもあります。以前、娘が自由研究のテーマを化石にしたので採集に連れて行きましたが、僕の方が熱中してしまいました。
小樽観光では、日本銀行旧小樽支店 金融資料館のカウンターにシカマイアの化石が多数あり、なかなかいい趣味をしているなと思いましたね(笑)。シカマイアはおもしろい二枚貝で、上面の殻がV字のように見えます。家族は「この人また見ているわ」と呆れていました。

化石が本当に大好きなのですね

好きなことを仕事にできているので幸せです。フィールドワークでは、時間を忘れてどんどん山奥に入ってしまうこともあります。最近は少し賢くなったので、出発からの時間を常に計り、いつ引き返すか気にするようになりました。いつも後ろ髪引かれながら帰路につきますね。
採集した化石を、あれもこれも持ち帰ろうとすると、とても重くなります。過去に何回も腰を痛めているので、今は 35リットルのリュックに背負えるだけと決めています。それ以上にいい物を見つけたら、抱えて持ち帰るか、埋めておいて翌日回収に行きます。好きを続けるのも大変ですが、許されるなら毎日行きたいです。

若い方へメッセージを!

好きなことを突き進めていていいのか、と悩んでいるのなら、ぜひ突き進めてください。僕自身、世の中の科学の流れや要求に沿うべきかと悩んだ時期がありました。もちろんそれが必要な時もありますが、自分の意思を貫くことも重要です。みんなが自信を持って自由に研究できることこそが多様性の尊重ではないでしょうか。その環境が理学部にはあります。

 

理学部広報誌「彩」第10号(2024年2月発行)掲載。>理学部 広報・刊行物

※肩書、所属は、広報誌発行当時のものです。

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