理学部を卒業し、現在博士後期課程で研究に取り組む6人の大学院生が、永井隆哉理学部長と率直に 語り合いました。
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理学研究院 地球惑星科学部門 教授
専門は高圧高温下の鉱物の結晶化学 岐阜県可児市出身、岐阜県立加茂高等学校卒業

研究者として生きること、人生を選ぶこと
永井 学年が上がるにつれ、就職などで同級生は減っていくと思います。博士課程での同世代との関わりはどうですか。
深澤 近々、学振のフレンドシップミーティングがあるので、そこでぜひ新たな交友を広げられたらと考えています。
内藤 物理学科は、もともと学部時代から女性が少ない環境で、孤独感はずっと感じてきました。4年生で入った研究室でようやく女性の先輩など、気軽に話せる人がいる状況になりました。学会の若手研究会などには思っていたより女性が多く、これからも積極的に参加して立場の近い仲間と知り合えたらいいと思っています。
永井 女性が少ないという話がありました。人口比は男女が約半分ずつなのに、理学系分野では、今も男性の比率が高いのが現状です。理学部全体で学生も教員も女性を増やしたいと考えています。小学生の頃には男女関係なく理科が好きな子が多かったように思いますが、年齢が上がるにつれバランスが変わります。そこには、大人からの影響もあるのかもしれません。みなさんは理学系の大学や大学院に進学するにあたり、周囲の方から何か言われたことはありましたか。また理系に進学して感じたことはありますか。

深澤 私の高校は理系志望者の男女比も半々ぐらいだったので、私も自然な流れで理系に進学しました。大学院の進学に関しても家族は応援してくれています。
内藤 家族は理系進学に賛成でしたが、友人の中には、女性の理系進学を周囲から心配された人もいます。
五藤 幼少期から動物が好きすぎたので、生物分野への進学は誰もが納得してくれていました(笑)。理系分野で活躍する女性が増えてほしいと思っています。一方で、そのためだと理解していても、最近は研究費や研究職のポストなどの女性限定枠も多く、私は女性ですが、同世代の男性の声を聞くと複雑な心境になることもあります。
永井 「女性限定」と書かれるのでそう感じますよね。でも振り返ると、これまでは理系はほぼ男性という現実があります。「女性はその世界に入りにくいのでは」という現状に対して、今は社会全体が変わろうとしている過渡期なのだと思います。どちらかが有利不利とならないよう、制度を考えていかないといけません。
内藤 物理には女性が少ないと先ほど言いましたが、私の周りでは、お子さんを産み、育てながら研究を続けている女性研究者をあまり見かけません。それぞれの事情があると思いますが、研究者を続ける上で、そこは諦めなければいけないのかと考えてしまうことがあります。多様なモデルケースがあればいいなと思います。
永井 理学部の他の学科には、結婚してお子さんを育てている女性研究者もいます。社会も大学も、さまざまな制度や支援を充実させて、出産・育児などで研究に対して不利益にならないように考えています。研究を続けることと、自分の人生を大切にすること。その両方を、ぜひ諦めないでほしいと思います。
研究室の外へ、世界へ
永井 海外経験も含めて、研究室以外での交流はどのように広がりましたか。
深澤 アメリカのネブラスカで2ヶ月の研修プログラムに参加しました。最先端の研究設備を使う機会にも恵まれ、海外の研究者との交流もでき、とても貴重な経験でした。

河村 修士2年の時に、HSI(*2)で知り合ったカロリンスカ研究所の研究者のところに数週間滞在しました。冬のスウェーデンは寒くて暗くて、英語圏でもなかったので辛かったです。ただ、それを乗り越えたことは大きな経験になっています。苦労も伴いますが、海外ネットワークを広げることは重要だと感じています。
五藤 私は修士課程をヨーロッパで過ごしました。実際に現地で生活をしてみて感じる文化の違いは想像以上に大きかったです。コミュニケーションを取り、研究を進め、ディスカッションをすることは大変でしたが、自分の視野は確実に広がりました。私は短期でもいいので、若いうちに海外経験をすることを強くお勧めします。
保苅 僕もスイスでの国際学会で海外研究者と交流できたことは有意義でした。一方で、日本で研究者のポストを目指すなら、正直なところ、海外留学のメリットをあまり感じないのですが。
五藤 研究のメッカに行くことには大きな意味があると思います。私が専門とする鳥の行動学研究は、ヨーロッパが盛んなので、その研究ネットワークに入り込むことができるのは重要でした。
永井 保苅さんの専門の火山に関しては、いわば日本がメッカだから海外に行くことの重要性を感じにくいかもしれません。むしろ世界中から火山研究者が日本に集まってくるでしょう。それも大変重要な国際交流です。価値観や文化などの異なる人と接することは、視野を広げ、人間力を高めることにもつながりますので、学生のみなさんのチャレンジはぜひ応援したいです。
博士号の先に広がるキャリア
永井 博士号取得後の進路についてはどう考えていますか。
河村 研究職に就きたいと考えていますが、アカデミアと企業の両方に魅力を感じていて、迷っています。
永井 かつては博士号取得後の進路は大学・研究所に進むイメージが強かったかもしれません。しかし最近は、企業や行政など、活躍の場は大きく広がっています。博士号を持つ人に期待されているのは、広い視野と柔軟な思考力、そして研究や企画の立案から推進、成果としてまとめ上げる力です。博士課程で身につけた経験は、幅広い分野で通用するものになっているはずです。一つの道に縛られる必要はありません。博士課程で培った力を、社会のさまざまな場で活かしてほしいと思います。
博士課程を一言で

永井 最後に、これから続く後輩に向けて、みなさんに博士課程を一言で表してもらいたいと思います。
保苅 「巡り合わせ」
学部3年生の有珠山実習の時の、今の指導教員 田中良准教授との出会いが人生を変えました。
河村 「分からないことを恐れない」
知的好奇心に貪欲になることが重要だと思います。
内藤 「やってみて初めて楽しいと気づく」
はじめはよく分からなくても、やり続けるうちにどんどん楽しいことに気付いていきます。
首藤 「フロンティアの向こう側を見られる」
まだ誰も知らないことに挑戦している、そのワクワク感を味わえます。
深澤 「好きなものへの追究」
好きとは誰かに強制されるものではなく、自分の中から湧き上がってくるものです。
五藤 「修羅の道、自分との闘い」
他のみなさんと少し違うかもしれません。迷いもあるし辛いこともある。学部時代の恩師の言葉「その時楽しいと思うことをする、それが正しい道になっていく」を信じて進んでいます。
永井理学部長より
今日はみなさんとお話しでき、真剣に責任感を持って研究に向き合っていることを聞けて嬉しく思います。これほど自分の興味に時間を使える時期は、人生で他にありません。今の時間を大切に充実した学生生活を送ってほしいです。また、最近は国や企業も博士人材を強く求めており、大きな追い風が吹いています。進学を迷っている人にも、博士課程だからこそ得られる価値を知ってもらいたいです。今日はありがとうございました。
*2 北海道大学Summer Institute:海外研究者・学生との交流や国際共同学習を行う短期国際教育プログラム。
※座談会は2026年6月に行い、本コンテンツは理学部広報誌「彩」第14号(2026年2月発行)に掲載された特集です。また、学年は広報誌掲載当時のものです。