理学部生物科学科(高分子機能学)では、キャリアパス教育の一環として、3年生を対象にした学科イベント「DCは語る」(DC:Doctoral Course=博士課程)を定期的に開催しています。博士課程の学生の研究生活や進学経験を聞くことで、進路の一つとして博士課程進学を考えてもらうことが目的です。2022年8月3日は、生命科学院ソフトマター専攻 博士2年の関澤 祐侑(せきざわ ゆう)さんが話しました。
関澤さんは、理学部生物科学科(高分子機能学)を卒業後、生命科学院ソフトマター専攻に進学し、現在は博士課程に在籍しています。
金ナノロッドの向きを制御
金の原子が集まり、小さい棒状の粒子になったものが、金ナノロッドです。金ナノロッドは、向きを変えることによって色が変わります。とても小さな金ナノロッドの向きを自由に揃えたり変えたりすることはなかなか難しいですが、もし、金ナノロッドの向きを自在に操ることができれば、光の性質を操ることのできる新しい材料を作れるかもしれません。私は、金ナノロッドの向きの制御をテーマに研究しています。
オリジナル研究のために博士課程へ
化学や材料科学に興味があり、生体分子デバイス研究室(居城研究室)を選びました。
修士課程では、DNAを材料として土台を作り、その土台に金ナノロッドをくっつけて刺激を加えることで金ナノロッドの向きを変えることに成功しました。でも、このテーマは先輩から引き継いだものだったので、次は自分で一から考えたテーマで研究をしてみたいと思い、博士課程に進学しました。今は、DNAよりも普遍的な材料である合成高分子を使って、金ナノロッドの向きを変えるための研究を続けています。
研究で楽しいとき、辛いとき
楽しさを感じるのは、仮説を立てて実験するときです。論文を読んで、新しい概念を知り、「これを適用すると、自分の研究がうまくいくかも?」と想像するとワクワクします。実験中に予想しなかった現象が見られたときも同様です。
逆に、辛いのは研究に行き詰まったときです。手を尽くしても上手くいかず、次の一手も思いつかないときは落ち込みます。研究とは、労力や時間をかけても成果が出ないことが多いものです。そんな時に、くよくよ悩まない人の方が、研究に向いているかもしれません。
進む道は自分で決めよう
博士課程に進学した方がいいのか迷って、先輩たちに相談したこともありましたが、人それぞれ考え方は違います。最終的には、進学したいという自分の気持ちを優先しました。このように、たまたま私は研究活動が好きでしたが、全ての人におすすめしようとは思いません。でも、これから本格的な研究を始めて、楽しいと感じたら、博士課程への進学も考えてみてください。
博士課程では、自由に研究したり、学外の研究者と交流したり、他では得られない経験が多いので、私は進学して良かったと思っています。今は基礎研究をしていますが、将来は自分の作った材料が社会で実用化されるような成果を出したいです。
※肩書、所属、学年は2022年インタビュー当時のものです。