北海道大学大学院理学研究院の小林厚志准教授、三浦篤志准教授、高橋啓介教授らの研究グループは、金属錯体色素を複層化した光触媒ナノ粒子とアルコール酸化触媒分子を連動させることで、持続利用可能な資源であるセルロースからクリーンエネルギー源となる水素と高機能材料となるセルロースナノファイバー(CNF)を、環境負荷なく同時合成できる光触媒を開発しました。
本研究により、地球上で最も豊富に存在する炭素資源であるセルロースが、CNFの原料だけでなく、クリーンエネルギー源である水素の原料としても活用できることが示されました。また、安定なセルロースを室温・水中における青色光照射という温和な条件で光溶出できたことから、持続利用可能な炭素資源としてのセルロースの利活用がさらに促進されると期待されます。さらに本研究は、光触媒の合成・評価、分光分析による反応メカニズムの可視化、さらには機械学習を活用したデータ科学という異なる専門分野が有機的に融合することで初めて実現された成果です。これにより、従来は経験と試行錯誤に頼っていた複雑系光触媒の設計が、構造と機能の関係を科学的に把握しながら加速される道筋が示され、さらなる発展が期待されます。

論文名:Photocatalytic dissolution of cellulose for hydrogen and nanofiber production: unveiling crucial factors via experiments and informatics(セルロースの光触媒的溶解による水素とナノファイバー生産:実験とインフォマティクスに基づく重要因子の解明)
DOI:10.1039/d5su00054h
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