理学部では、博士後期課程の学生が研究や進路について語る「キャリアカフェ」を開催しています。近年、高度な専門性と柔軟な発想をあわせ持つ博士人材への関心は高まっています。一方で「博士後期課程って実際どうなの?」と疑問を持つ学部生や修士課程の学生も少なくありません。
2026年6月12日は、数学科出身で現在理学院数学専攻博士後期課程3年に在籍する松川寿人さんが登壇しました。会場には専門の異なる学生も含め、多くの方が集まり、数学の世界と進路についての話に耳を傾けました。
数学を続けて博士後期課程へ
学部3年次に北海道大学に編入し、そのまま数学を続けてきました。もともと数学をやりたいという気持ちが強かったので、大学院進学について大きく悩むことはありませんでした。同級生の進路はさまざまで、高校や高専の教員になる人もいれば、企業に就職する人もいますし、中にはお酒関連など全く異なる分野に進む人もいます。数学という分野は、進路の幅という意味でも比較的自由度が高いと感じています。
代数幾何という分野
数学の特徴の一つは、紙とペンがあれば研究できる点です。しかしそれ以上に面白いのは、異なる分野同士の「つながり」が見えてくることです。
私が研究しているのは「代数幾何」と呼ばれる分野で、簡単に言うと多項式のような代数の問題を幾何の道具を使って解いたり、逆に図形(幾何)の性質を調べるときに代数的な手法を使ったりします。有名なフェルマーの最終定理や、ヴェイユ予想なども幾何の道具を使って解かれました。こうしたつながりを発見することが、数学の面白さの一つだと感じています。

数論と幾何をつなぐ考え方と現在の研究
今回は、「ヴェイユ予想」(多項式の解の個数に関する問題)を例に、数論と幾何のつながりを簡単に紹介します。単に方程式を直接解くのではなく、解集合を図形として捉え、コホモロジーといった幾何学的な道具を使って調べていきます。具体的には、フロベニウス写像という特別な変換を考え、その固定点の個数を調べます。このように図形の情報から方程式の性質を理解することができます。こうしたアプローチは数学の中でも重要な考え方の一つです。

現在私は、図形に付随する「導来圏(どうらいけん)」と呼ばれる対象に着目しています。これはコホモロジーの親玉、つまりさらに一般化したような構造で、図形の情報をより高いレベルで捉えることができます。特に、「導来圏から元の図形をどこまで復元できるか」という問題や、そこから新たな幾何的対象を構成していくような研究を行っています。
研究の考え方
どちらかというと、「数学の厳密性に加えて、背後にある構造や関係を雰囲気として捉えること」も意識しています。もちろん最終的には厳密な形にする必要がありますが、その前の段階では、構造やつながりをイメージすることが重要だと感じています。


※肩書、所属は、2026年取材当時のものです。
キャリアカフェ2026 「学部の学びのソノサキ」
理学部が開催するランチタイムセミナー形式の企画。博士後期課程の学生が自身の研究や進路について語り、学部生がお昼を食べながら気軽に参加できる場です。
https://www2.sci.hokudai.ac.jp/event/24538