北海道大学水産学部の筒井幸多氏、同大学大学院理学研究院の角井敬知講師の研究グループは、海藻に付着して生きるクラゲの一種であるアサガオクラゲから、2種の吸虫類の幼虫を発見しました。
アサガオクラゲは、世界から約50種が知られる十文字クラゲ綱の一員です。日本では特に北日本の沿岸域でよく見つかる生き物ですが、何を食べるのか、何に食べられるのかといった基礎的な生態にも謎の多い、研究のあまり進んでいない動物群です。
今回、北海道余市町の海藻上から採集したアサガオクラゲの体内に吸虫類の幼虫が寄生しているのを発見しました。これまで十文字クラゲ類の寄生生物としては、2022年に北海道小樽市のアサガオクラゲから報告された吸虫類の幼虫が知られるのみでした。今回得られた吸虫類について複数遺伝子のDNA配列情報を決定し、公開されているDNA配列情報と比較したところ、2022年に報告された種とは異なること、2種が含まれ、いずれもLepocreadiidae科という成体が魚類に寄生するとされるグループに属すること、うち1種は成体がサバ類に寄生する種であることが明らかになりました。
今回の発見により、日本海に面した北海道の10kmほどしか離れていない2地点に生息するアサガオクラゲには、少なくとも3種の吸虫類が寄生しうることが分かりました。今後、調査地や調査対象種を広げることで、十文字クラゲ綱からさらなる寄生生物の発見が期待されます。

論文名:Overlooked parasite diversity in Staurozoa: two species of Lepocreadiidae (Trematoda: Digenea) parasitic in Haliclystus tenuis(見落とされていた十文字クラゲ寄生性生物の多様性:アサガオクラゲに寄生するLepocreadiidae科吸虫2種の発見)
DOI:10.2108/zs250001
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