北海道大学大学院先端生命科学研究院の上原亮太准教授、同大学大学院理学研究院の小谷友也准教授、同大学の玉置信之名誉教授(元電子科学研究所教授)、京都工芸繊維大学の松尾和哉助教らの研究グループは、ゼブラフィッシュ初期胚に備わった細胞分裂障害への抵抗性を明らかにし、その細胞メカニズムを特定しました。
個体発生においては、細胞分裂が効率良く、かつ精度を保ちながら起こる必要があります。このバランスを決める仕組みの解明は、生き物のからだ作りを理解する上で重要な課題です。本研究では、光で細胞分裂を操作する独自技術である光変換性分裂阻害薬によって、ゼブラフィッシュ胚が原腸形成期に、分裂異常への著しい抵抗性を獲得することを発見しました。さらに、胚内部の細胞増殖ダイナミクスを捉えるイメージング解析によって、初期胚に特有の「ファジーな」分裂異常監視機構が、分裂異常によるダメージを最小限に抑えつつ必要な細胞増殖率を保つ役割を果たすことを明らかにしました。
本研究成果は、あらゆる生命に確率的に起こる細胞分裂エラーに対して、細胞がどのように対処して確実なからだ作りを実現するのかについての理解を助け、がんなどの疾病リスクを抱える染色体異常細胞がどのように長期間からだに潜伏し得るのかに関するヒントを提供すると考えられます。
なお、本研究成果は、2026年3月23日(月)公開のCommunications Biology誌にオンライン掲載されました。
【ポイント】
- 光で細胞分裂をon/offできる独自化合物で、初期胚の分裂異常パターンを随意に操作。
- 原腸形成以降の胚が、長時間続く甚大な分裂異常を耐え抜き成魚になれることを発見。
- 紡錘体チェックポイントの強度が、分裂の精度と効率のバランスを決める鍵。

プレスリリース:初期胚が細胞分裂異常を耐え抜く仕組みの発見~光操作が解き明かす、ゼブラフィッシュ胚の驚くべきトラブル対応力~(先端生命科学研究院 准教授 上原亮太)