【概要】
北海道大学大学院理学研究院の石垣侑祐准教授及び同大学大学院総合化学院博士後期課程(研究当時)の張本 尚氏(現在:分子科学研究所助教)らの研究グループは、レドックス反応を巧みに利用することで、従来のアプローチでは到達困難であった分子骨格を含む、複数の分子構造を作り分ける戦略を考案し、その有効性を実証しました。
研究グループは、レドックス活性なユニットを分子内の適切な箇所に配置することで、レドックス刺激によって複数の分子構造を与え得る分子をデザインしました。得られる分子構造を変化させるには、骨格そのものを作り直すことが一般的ですが、周辺に導入する置換基の立体的効果を利用することで、三つの分子骨格をそれぞれ創り出すことに成功しました。立体的に混雑した分子は作りにくいことが知られていますが、レドックス刺激で分子骨格の多様化を実現可能なため、従来の手法ではアクセス困難な化合物を得ることも可能です。実際に、三つのうちの一つは、およそ100年にわたって合成・単離例のなかった分子骨格であり、本手法の有効性を裏付けるものです。以上より、学術的価値のみならず、科学技術分野における応用展開が期待されます。

なお、本研究成果は、2025年5月8日(木)公開のNature Communications誌に掲載されました。
論文名:Diverse Redox-Mediated Transformations to Realize the Para-Quinoid, σ-Bond, and Ortho-Diphenoquinoid Forms(パラ-キノイド、σ結合、オルト-ジフェノキノイド構造の創出を実現する酸化還元刺激による多様な構造変換)
URL:https://doi.org/10.1038/s41467-025-59317-w
詳細は理学研究院>研究ニュースをご覧ください。