マメ科植物は根粒菌と共生することで、窒素栄養が乏しい土壌環境でも生育できます。これは根粒菌が大気窒素をアンモニアに変換する能力(窒素固定能)を持ち、マメ科植物は根粒菌の働きを通して大気中の窒素を利用できるからです。このような有益な細菌をマメ科植物は根に形成するコブ状の根粒に共生させています。しかし、無秩序に多くの根粒が形成されると土壌から吸収した水や他の栄養を葉や茎に輸送するといった根の本来の機能を損なう恐れがあります。そのため、宿主となるマメ科植物は根粒菌の感染によって根粒の分布が過密に形成されないように調節する必要がありますが、その機構は分かっていませんでした。今回、マメ科のモデル植物であるミヤコグサの研究から、根における根粒菌への応答には一定のリズムを刻む周期的な遺伝子の働きが伴っており、その周期性が根粒菌の感染を許す根の領域の広さを規定することで、根粒の分布を調節していることを発見しました。さらに、この遺伝子発現のリズムの維持には植物ホルモンであるサイトカイニンが必要なことを明らかにしました。
この研究成果は、基礎生物学研究所 共生システム研究部門 征矢野敬准教授、川口正代司教授、大熊直生特任助教(現 理化学研究所)、奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 中島敬ニ教授、郷達明助教、北海道大学大学院 理学研究院 生物科学部門 綿引雅昭准教授、関西学院大学 生命環境学部 武田直也教授、赤松明助教(現 理化学研究所)、理化学研究所 環境資源科学研究センター 質量分析・顕微鏡解析ユニット 榊原均客員主管研究員、小嶋美紀子専門技術員、竹林裕美子テクニカルスタッフ I、愛知教育大学 教育学部 菅沼教生名誉教授らの共同研究により得られたものであり、米国の科学誌 Science に 2024 年 7 月19 日に掲載されました。
DOI: 10.1126/science.adk5589
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