【概要】
北海道大学理学部生物科学科/生物学の藤森千加助教(前東京大学所属)は、東京大学大気海洋研究所海洋生命科学部門の神田真司准教授グループとの共同研究により、GnRH神経系において発現し、排卵制御の鍵となるGnRHパラログの発現に種間差が存在することについて、共通祖先が比較的最近まで保持していた冗長な発現が原因である可能性が高いことを明らかにしました。
機能的に相同な細胞においても、種によって発現するパラログが異なることが稀に見られますが、その理由はほとんどのケースで明らかにされておりません。本研究では、繁殖に必須と考えられているGnRH神経系をモデルとして、ピラニアにおけるGnRHパラログの発現を解析しました。すると、同じ機能のGnRHパラログ(gnrh1、gnrh3)が視床下部ニューロンで共発現し、両者が冗長的に脳下垂体機能を調節していることがわかりました。さらに、遺伝子ノックアウトや、他魚種でのエンハンサー活性解析でさらなる検証を行い、共通祖先がもっていたこの共発現が、現生種で脳下垂体制御に用いられているGnRHパラログのサブタイプが種間で一定しない原因となっていることを証明しました。この研究成果は今後遺伝子進化一般の理解に役立つことが期待されます。
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【発表者・研究者等情報】
東京大学 大気海洋研究所
神田 真司 准教授
藤森 千加 研究当時:特任研究員
現:北海道大学理学研究院 助教
杉本 航平 研究当時:修士課程
【論文情報】
雑誌名:iScience
題 名:Long-lasting redundant gnrh1/3 expression in GnRH neurons enabled apparent switching of paralog usage during evolution
著者名:Chika Fujimori, Kohei Sugimoto, Mio Ishida, Christopher Yang, Daichi Kayo, Soma Tomihara, Kaori Sano, Yasuhisa Akazome, Yoshitaka Oka, Shinji Kanda*
DOI:10.1016/j.isci.2024.109304
【研究助成】
本研究は、科研費「挑戦的萌芽研究(課題番号:24657050)」、「挑戦的研究(萌芽)(課題番号:18K19323)」、「新学術領域研究(公募研究)(課題番号:18H04881)」、「基盤研究(B)(課題番号:23H02306)」、三菱財団自然科学研究助成、住友財団 基礎科学研究助成、三島海雲記念財団 学術研究奨励金の支援により実施されました。