化学科・生物有機化学研究室の高畑信也特任講師,村上洋太教授らの研究グループは,遺伝情報の取り出しを制御するクロマチン高次構造制御機構の一端を明らかにしました。
研究グループはクロマチン内のヒストンを抜き取ったり組み込んだりするヒストンシャペロン活性を持ち,クロマチン構造変換因子として知られるFACT(FAcilitate Chromatin Transcription)複合体の機能に着目して,分裂酵母を用いてFACTとヘテロクロマチンの関係を遺伝学的・生化学的に解析を行いました。この結果,FACT複合体はヘテロクロマチン内のヒストンH2A/H2Bの交換反応を行っていることがわかりました。またFACT複合体は,少なくとも2つの独立した認識機構によってヘテロクロマチン上へ積極的かつ選択的に結合してくること,この2つのヘテロクロマチン認識機構を同時に欠損させた分裂酵母の変異株ではヘテロクロマチンが維持されなくなり,崩壊してしまうことが明らかとなりました。さらにそれに加えて,研究グループはヘテロクロマチンを形成する上で鍵となる因子,HP1/Swi6タンパク質の変異体を多数単離してFACT複合体がこのHP1/Swi6をどのように認識するのかを解析し,認識メカニズムを分子レベルで明らかにしました。
今後,ES細胞・iPS細胞・体性幹細胞などから様々な細胞への分化が起きる時のクロマチン高次構造制御を通じた制御機構の理解に寄与するとともに,再生医療に向けた効率的な分化誘導系の構築に繋がる事が期待されます。
なお,本研究成果は,2021年8月18日(水)にCell Reports誌にオンライン公開されました。
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