ゲルでがんの親分を見つけ出す:がん幹細胞の迅速誘導法の開発にはじめて成功
~がんの再発予防,がん根絶新治療薬の開発に期待~
■ポイント
- DNゲルが,24時間でがん細胞を先祖返りさせて,がん幹細胞を誘導することに成功。
- ゲルによるがん細胞の先祖返り(リプログラミング)は,ハープ(HARP)現象と命名。
- がん幹細胞は治療抵抗性,再発の原因。ゲルはがん診断・根絶薬剤開発の基盤となることが期待。
■概要
北海道大学大学院医学研究院腫瘍病理学教室兼北海道大学化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)の田中伸哉教授,同大大学院先端生命科学研究院の龔 剣萍(グンチェンピン)教授,安田和則名誉教授,国立がん研究センター研究所の間野博行所長らの研究グループは,ハイドロゲルが24時間という極めて短時間で,がん細胞を先祖返りさせて,がん幹細胞を誘導することを発見しました。
国内及び国際(米国)特許を出願中で,ICReDD 及び GI-CoRE ソフトマターグローバルステーションの融合研究の成果です。なお,本研究成果は,日本時間 2021年3月30日(火)午前1時公開のNature Biomedical Engineering 誌にオンライン掲載されました。
■論文名
Rapid reprogramming of tumour cells into cancer stem cells on double-network hydrogels(DNゲルによるがん幹細胞へのリプログラミング誘導)
■著者名
鈴鹿 淳1,2,津田真寿美1,2,8,王 磊1,2,高阪真路3,岸田佳倫1,仙葉愼吾4,杉野弘和1,油谷幸代5,Martin Frauenlob2,6,黒川孝幸2,7,小島進也3,上野敏秀3,近江谷克裕5,間野博行3,安田和則2,4,龔 剣萍2,7,8,田中伸哉1,2,8
(1北海道大学大学院医学研究院腫瘍病理学教室,2北海道大学国際連携研究教育局(GI-CoRE)ソフトマターグローバルステーション,3国立がん研究センター研究所細胞情報学分野,4北海道大学大学院医学研究院スポーツ医学分野,5国立研究開発法人産業技術総合研究所,6北海道大学大学院生命科学院,7北海道大学大学院先端生命科学研究院,8北海道大学化学反応創成研究拠点(WPI―ICReDD))
■雑誌名
Nature Biomedical Engineering(Nature 系の生体医工学の専門誌)
DOI 10.1038/s41551-021-00692-2
公表日 日本時間2021年3月30日(火)午前1時(英国時間2021年3月29日(月)午後4 時)
■北大プレスリリース: https://www.hokudai.ac.jp/news/2021/03/post-814.html