【数学科】講演会:社会で貢献する数学

開催日

2022122
ポスター(クリックで表示されます)

数理連携推進室主催のイベントを開催します。

日時:令和4年12月2日(金)15:00-17:30
会場:理学部3号館3階大講義室(3-309)
   ※会場を変更しました(11.22更新)
対象:理学部・理学院の学生
講演:岡本守氏(日立北大ラボ)、大泉嶺氏(国立社会保障・人口問題研究所)、石井惠三氏(株式会社くいんと)※講演順
主催:数理連携推進室(世話人:坂井 哲

タイムテーブル
15:00~15:05 主催者挨拶
15:05~15:35 岡本守氏
15:40~16:30 大泉嶺氏
16:40~17:30 石井惠三氏

オープンプロブレム化による数学の社会応用について
岡本守氏(日立北大ラボ)

日立北大ラボでは、北海道大学や他のステークホルダーと連携して、地域における地産地消低炭素な電力供給と災害時も供給可能な電力網の構築をめざして、小規模なナノグリッドから成る地産地消自立型地域エネルギーシステムの研究開発に取り組んでいる。
本システムは、複数のナノグリッドを電気自動車等で互いに電力融通することで、電力運用の安定化や余剰電力を活用した運搬サービスなど、単独のグリッドでは実現できない電力サービスの提供が可能となる。
本システムの実現に向けて、問題を作る数学と問題を解く数学をキーワードとした数学の社会実装が重要となる。本発表では,本取り組みの一環として、マラソン型プログラミングコンテストを利用したオープン解決と、その発展として自立型地域エネルギーシステムシミュレータ (SeRESS) について紹介する。

[講演者紹介]
岡本 守 /博士(理学)/株式会社日立製作所
2020年9月北海道大学大学院理学院数学専攻博士後期課程中退、同年12月博士(理学)取得。2021年1月日立製作所入所。以降、地産地消地域エネルギーシステムの開発に従事。

 

日本の人口減少における地域間移動と地域別出生率の影響~行列モデルによる感度分析とその理論~
大泉嶺氏(国立社会保障・人口問題研究所)

国勢調査に寄れば、日本の人口は2010年をピークに、この10年間減少に転じている。その原因は少子化、つまり期間合計特殊出生率が人口置換水準を下回る状況が1970年代半ばから45年以上続いている事に起因する。2010年以前は寿命の延長による死亡者数の減少が概ね出生数と国際移動者数を下回っていたため、人口は増え続けていた。しかし、2010年頃にこれらは逆転し、現在に至る。
人口のダイナミックスを決定する要因は出生・死亡・人口移動の三つである。日本は全国的に少子化であるが、出生率や人口流入出の大小は自治体によって異なる。
そこで本研究では地域別出生・死亡過程に国内移動を加えた行列モデル、多地域レスリー行列の理論を紹介すると共に人口減少に影響を与えている年齢、地域の出生率と移動率を実際のデータと摂動理論を用いて数学的に示したい。

[講演者紹介] 大泉 嶺 /博士(環境科学)/国立社会保障・人口問題研究所 主任研究官(専門:確率解析、structured population models、制御理論、数理生物学) 2013年北海道大学環境科学院にて博士号(環境科学)取得、現在の研究をスタート。2013年より東京大学大学院数理科学科(特任研究員)、2014年明治大学研究・知財戦略機構 研究推進員、2015年国立社会保障・人口問題研究所に入省と同時に厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官室に出向、2017以降現職に至る。

数学に裏付けられた構造最適化ソフトウェアで製造業の設計開発をお手伝いする
石井惠三氏(株式会社くいんと)

近年、構造物の設計に「有限要素法」は不可欠な技術として定着した。元は航空機の翼の挙動を計算するために生み出された手法(学問)であるが、発展のかなり早い時期から数学者の積極的な参加により、この手法の持つ数学的な側面が次々に明らかになり、今では「偏微分方程式の汎用的な近似解法」として認知され、特定の現象に捉われず、個別科学を横断的に結ぶ役割を果たすようになった。
我々は大学のユニークな研究に着目し、共同研究/開発のプロジェクトを通して、この「有限要素法」と「最適化」を組み合わせて開発した「トポロジー/形状最適化」のソフトウェアを長年に渡り保守/拡張を継続することで、さまざまな製造業の製品の軽量化や性能向上のお手伝いをしてきた。
欧米の強力なソフトウェアの狭間で、生き残ることが出来た理由は、大学の研究者が理論の構築過程で数学的考察に充分時間を掛け、しっかり体系を整えたことが大きい。
小さな会社が夢を追い、苦労を重ねながらも、市場のシェアを拡げていった足跡を紹介する。

[講演者紹介]
石井 惠三/博士(工学)/株式会社くいんと 代表取締役会長
1970年日本情報サービス株式会社(現・株式会社JSOL)入社、有限要素法を用いたさまざまなプログラム作成に従事。1985年株式会社くいんと を設立(代表取締役社長)。「大学のユニークな研究を基に商用プログラムを開発し、製造業の設計業務をお手伝いする」というビジネスモデルを掲げ、大学との共同研究/開発を通して、構造最適化プログラム、他を開発。2019年 代表取締役会長に就任、現在に至る。

 

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